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気持ちよく、いきいきと働ける職場とは 島津明人・慶応大学総合政策学部教授

 ◇仕事丸投げ上司には

 海原 上司が部下に仕事を丸投げし、部下はどうしようもないというような場合、部下の立場でできることはありますか。

 島津 このような上司がマネジメントしている職場は、そもそも職場全体のパフォーマンスが低く、部下の動機づけも低下している可能性があります。

 そのような状況で、部下自身が上司に対してできることとして、「何を、いつまでに、どのようにやるのかを明確にしてもらう」「業務に必要な情報を提供してもらう」ことでしょうか。

 そのほか、業務の進捗(しんちょく)状況を文書やメールで上司に報告し、可視化しておくことも、責任の所在を明示する上で有効と思います。

 また、同僚と情報交換を行いながら、自分が置かれている状況を共有しておくことも大切です。

 それでも事態が変わらなければ、上司のさらに上司、人事に相談してみるのも一つの方策です。

 ◇「疲労借金」の返し方

 海原 仕事が終わると、疲れ切って、何もできない。家に帰って寝るだけ。中には、寝落ちしてお風呂も入らない。そういった声も聞きます。職場を活性化するための方策はありますか。

 島津 経営層も、働く人も、休むことの重要性を理解することが大切です。

 私たちは一定時間、仕事をすると、それなりに疲労が蓄積してきます。いわば、「疲労借金」がたまるわけです。

図2

 この疲労借金を、小まめに上手に返済できれば、大きなダメージは少ないのですが、うまく返せないと、疲労が蓄積し、健康やパフォーマンスにダメージを与えてしまいます。

 借金を返すことを心理学では「リカバリー」というのですが、借金を返すタイミングは、ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始といった長期休暇、週末、1日の就業後、昼休み、休憩時間など、さまざまな機会があります。

 海原 少しずつでも疲労借金を返すことが大事なんですね。

 島津 まずは、週末、1日の就業後、昼休み、休憩時間など、身近なところから休み方を見直してみてはいかがでしょうか。

 最近では、社員の午後のパフォーマンス低下を防ぐために、昼休みに昼寝を推奨する企業もあります。

 良い仕事をするには、良い休み方が必要です。つまり、働き方と休み方とは、表裏一体の関係にあるのです。

 職場としても、上手な休み方を後押しする仕組みをつくることで、職場全体の活性化につなげる視点を持つことが大切と言えるでしょう。

 〔島津先生は、11月16日に都内で開かれる「第8回日本ポジティブサイコロジー医学会」で、「働く人の幸せ」について提言を行います。〕

(文 海原純子)

 島津 明人(しまず・あきひと)

 慶応大学総合政策学部教授。公認心理師、臨床心理士。ユトレヒト大学(オランダ)客員研究員、東京大学大学院医学系研究科准教授、北里大学一般教育部人間科学教育センター教授などを経て、2019年4月から現職。専門は産業保健心理学、行動科学。著書に「Q&Aで学ぶワーク・エンゲイジメント:できる職場のつくりかた」(金剛出版)、「ワーク・エンゲイジメント:ポジティブ・メンタルヘルスで活力ある毎日を」(労働調査会)、「産業保健心理学」(ナカニシヤ出版)などがある。

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