治療・予防

精神疾患の薬物治療
患者と主治医で方針の共有を

 近年の診療報酬改定により、精神疾患に使う薬(向精神薬)の多剤処方をした場合は診療報酬が減点されるようになった。「精神疾患の治療において多量や多種類の薬剤処方は、治療にリスクを伴うことが分かってきたのです」と関西医科大学付属病院(大阪府枚方市)精神神経科の加藤正樹准教授は話す。

不要な薬を続けなくて済むよう、主治医とよく相談を

不要な薬を続けなくて済むよう、主治医とよく相談を

 ▽単剤治療が原則

 これまで精神疾患の治療では、抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠薬などの向精神薬を多剤処方することが一般的だった。しかし、多剤併用は長期化すると、薬の相互作用から副作用が増加する傾向にある。加藤准教授は「副作用による症状なのか、病気による症状なのかの区別が困難で、適切な治療が難しくなります。必要のない薬を使い続けるおそれもあります」と指摘する。

 医療制度の改革などもあり、現在は同一種類の向精神薬は複数使用せず単剤での治療が原則になっている。例えばうつ病の治療では、同じ種類の抗うつ薬を複数処方する治療は、有用性が乏しいことが実証されているため、推奨されない。

 ▽不安は主治医に相談を

 単剤での治療が推奨されているにもかかわらず、現在も多剤併用はなくならない。原因の一つに患者の希望があるという。「薬を減らすと症状が悪化するのではないかという不安から、患者さんが減薬を望まないケースがあります。本来なら、そうした患者さんに対して、より効果的な治療のためには減薬が必要だという説明をしなくてはならないのですが、患者さんの希望を優先させてしまうのです」と加藤准教授。

 ただし、気を付けたいのは、特に精神疾患の治療において減薬は患者の判断で行ってはならないという点だ。薬の服用を急にやめると、疲労感、吐き気、不眠、めまいなどの離脱症状が起こることがあり、例えばうつ病では症状が再び表れる場合もある。

 処方されている薬の量や種類に不安を感じたら、主治医に相談すべきである。まず、飲んでいる薬の効果や目的について説明を求め、薬の内容を知ることが大切だ。その上で、減薬や薬の切り替えなどを相談する。

 加藤准教授は「薬の量や種類が適正かどうかは、遠慮なく主治医に尋ねてください。精神疾患の治療では、患者と主治医の双方が治療方針を共有するのが望ましいのです」と話している。(メディカルトリビューン=時事)


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