インタビュー

この症状はいったい何?
患者の不安、疑問にこたえる医師

 ◇情報共有で治療に効果

 最近は患者側もネットなどの情報で勉強することもよくある。患者側の思い込みが治療の妨げになると指摘されるが、國松氏は診断で病名が確定したり、疑わしい病名が判明したりすれば患者に伝える方針を採っている。「本当に先生の言った通りでした」と感謝されるケースもある。ネットの医療情報のレベルも上がってきた。國松氏は「そうした医療サイトを患者に教える。それによって情報を共有し、治療が円滑に進む」と言い、「治療の『軸』ができる」と表現する。

 「悪いニュース、例えば、がんであっても速やかに告知して患者に知ってもらう方が良い。今はどういう状態で、どういう治療法があるのか。軸ができるとは、そういうことだ」

患者の訴えに耳を傾ける國松淳和医師

患者の訴えに耳を傾ける國松淳和医師

 ◇患者の声に耳を傾ける

 初診時には、患者が自分の症状をどう表現するかに注意深く耳を傾ける。紹介状の内容と違うと感じることもある。通院後に改めて症状を尋ねると、初診時と印象が変わることもある。

 「患者は紆余(うよ)曲折があって、私たちの病院を訪れる。症状をよく診るとともに、患者の声に耳を傾けることが大切だ」と力説する。國松氏は一見すると元気そうだが、死に至る恐れもある疾患の兆候を読み取る。

 子どもの頃に昆虫採集に熱中した。「セミでも、ツクツクボウシやニイニイゼミなどあまり採れないものをゲットできるとうれしかった」と國松氏。現在は医師として珍しい病気だと判断を下すときもある。「ニッチなディジーズ」という医療関係者向けの著書も出版している國松氏は「なかなか判断しにくい疾患を特定するのは、医師にとっても喜びだし、患者にもメリットがある。『ウインウイン』の関係だと思う」と語る。

 ◇患者も先入観を捨てて

 病院には、北海道や東北はじめ各地から患者が訪れる。彼らは困った末に意を決して来ている。これまでの治療で満足が得られなかったことも背景にあるだろう。

 例えば、薬について「今まで飲んでいた薬でこんな症状が出た」という患者もいる。「だが、それは患者の決めつけで、現在服用している薬が『正解』というケースもある」。二つの薬を飲み、「Aの薬を飲んだら吐き気がしたのでやめてしまいました」といわれ、よく調べるとBの薬の副作用によるものだということもあり得る。

 「副作用などについて患者に即答することはない。『お薬手帳』から類推した上で、症状との因果関係を患者に納得してもらわなければならない。患者側も先入観に捉われず、医師の話を聞いてほしい」

 國松氏は、医師と患者とのコミュニケーションについてこう説明した。(鈴木豊)

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