医学トップの視座

臨床に根差した研究を 
患者数日本一を誇る―順天堂大学医学部

 ◇高い国試合格率

 国公私立大学80校中、過去20年間の平均で医師国試の合格率第2位を維持している。「グループで勉強させることで、助け合いの精神も生まれますし、少人数に担任をつけて、教師陣もかなり積極的にサポートしています。留年する学生もほとんどいません」

順天堂医院1号館とB棟外観(順天堂大医学部提供)

 カリキュラムの中では、とくに英語教育に重点を置いている。海外留学を念頭においたTOEFLのスコアアップを目指している。昨年からは、米国の臨床研修に参加するために必要となるECFMGの認定取得を目指すためのカリキュラムを導入した。

 「英語で問診ができるだけでは世界で生きていかれません。ディスカッションで自分の意見をきちんと言えるようにすることが国際社会では必要。ディベートなどの教育も取り入れていかなければ…」。さらに、リーダーシップを身に着けるためのカリキュラムの導入も検討中。国際的に活躍できる医師の養成に取り組んでいる。

 ◇六つの付属病院

 医学部卒業生の7~8割が、大学に残って初期研修を受けるという。幅広い専門分野を備える本院のほかに、静岡病院、浦安病院、順天堂越谷病院、順天堂東京江東高齢者医療センター、練馬病院があり、地域医療、救急医療、高齢者医療など、それぞれ特徴のある6病院で、ほとんどの医療を網羅できる点が最大の強みとなっている。

研究棟(A棟)にある革新的医療技術開発研究センター(順天堂大医学部提供)

 研究分野でも多くの功績を残している。服部医学部長率いる脳神経内科領域を筆頭に、基礎から臨床まで幅広い研究を行っており、論文引用ランキングでも上位に入っている。

 多くの研究成果を生み出す環境も整備されている。順天堂大学は昭和40年代に講座別の研究体制を廃止し、研究に必要な施設や機器・設備類を中央機構で導入して大学全体で使用する「中央共同研究体制」に再編、効率的、効果的な研究ができるような仕組みになっている。

 ◇パーキンソン病患者4000人

 服部医学部長は、長野県で金属加工会社を営む父親から、後継者として期待されて育った。

 「僕の名前は会社に孝行する長男坊という意味で、信孝とつけられました。幼稚園の頃から武田信玄や上杉謙信のリーダーシップについて、父親と風呂に入るたびに聞かされていました」

 工学部に進学する予定だったが、高校2年生のとき、映画「赤ひげ」を見て医師を目指した。一浪して順天堂大学医学部に入学。脳神経内科を専門とし、パーキンソン病の研究と臨床に全力を注いできた。

 1998年にパーキンソン病の発症につながる遺伝子異常を発見、その後も数多くの研究成果をあげている。日本はもとより海外からも患者が集まり、同科で診療したパーキンソン病患者数は4000人を超える。

インタビューに応える服部信孝医学部長

 ◇「一番の褒め言葉」

 「患者さんが病気の特性をきちんと理解して対応していけば、日常生活の中でできることもたくさんある。僕の診察を受けると患者さんが元気になると家族から言ってもらえるのが、一番の褒め言葉だと思います」

 毎年、パーキンソン病患者会のメンバー約80人と一緒に温泉旅行に出かける。往復のバスの中では、患者一人ひとりと個別相談に応じる。1泊することで、患者が生活の中でどんな問題に直面しているのかを見られる。それが新たな研究へのモチベーションにもつながる。

 「今後はパーキンソン病をより早期に診断できるツールの開発や、病気の進行を食い止める方法を見つけていきたい」。研究のための研究ではなく、患者目線で患者に役立つ研究を心がけていく姿勢が、次世代にも受け継がれていくに違いない。(医療ジャーナリスト・中山あゆみ)

【順天堂大学医学部 沿革】
1838年 順天堂医学塾創立
  73年 順天堂医院開院
1943年 順天堂医学専門学校開設
  46年 順天堂医科大学に昇格
  51年 新制・順天堂大学の開学、体育学部開設
  52年 医学部医学科を開設
  59年 大学院医学研究科(博士)解説
  67年 順天堂伊豆長岡病院(現:静岡病院)開院
  84年 順天堂浦安病院開院
  88年 創立150周年 さくら新キャンパス誕生
  89年 順天堂越谷病院開院
2004年  順天堂東京高等高齢者医療センター開院
  05年  順天堂練馬病院開院
  13年  創立175周年 大学院医学研究科(修士)開設

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