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臨床に根差した研究を 
患者数日本一を誇る―順天堂大学医学部

 順天堂大学医学部は、長崎で学んだ蘭方医の佐藤泰然が1838(天保9)年、江戸薬研堀(現・東京中央区)にオランダ医学塾・和田塾を開いて以来、わが国で最も歴史のある医系教育機関として180年を越える歴史をもつ。「順天堂医院」の名称は、病人を収容する病院ではなく、癒やしの場でありたいという設立の理念に基づいたもの。六つの付属病院をあわせると総病床数は3千を超え、日本最大規模を誇る。
 服部信孝医学部長は「患者さんと同じ目線で診療するという伝統が現在に至るまで脈々と受け継がれ、それが日本一の外来患者数につながっていると思います」と話す。

インタビューに応える服部信孝医学部長

 ◇AI時代に必要な力

 「医学部を目指す理由の一つに、経済的に安定した職業だからというのがありますが、医者の世界は10年後にはどうなっているかわかりませんよ」「医学部に来た人の中で本当に医者になりたい人が何パーセントいるのか知りたい」。服部医学部長は真顔で語り、医学部が一種のブームになり、成績がよければ受験するという風潮にくぎを刺す。

 「人工知能(AI)があれば、いま医師が3人必要なところも1人で十分になるかもしれない。とくに診断部門はほぼAIの関与が大きい」と予測する。

 AIが苦手とするのは、人の表情をみて相手の気持ちを瞬時に判断するということ。これから活躍する医師には、コミュニケーション力が重要だと強調する。

 ◇「一緒に仕事をしたい」

 医学部に入学する学生に求めるのは、人間が好きで実直、コミュニケーション能力が高いこと。基準となるのは「一緒に仕事をしたいと思うかどうか」。

 そのため面接を重視し、1人あたり20~30分、じっくり時間をかける。二次面接には入学願書の補足資料として、高校だけでなく小中学校の通知簿、賞状、表彰状、免許・資格、外部検定試験などの証明書、柔剣道、茶道、華道などの段位等証明書などを持参するよう求めている。受験生の人となりを多角的に見極めようという狙いからだ。

 「知識はもちろん必要ですが、人の気持ちは計算式で出すわけにはいかないので、やはり心が大切。さまざまな層の患者さんに対して、相手の表情をみながら瞬時に適切な対応をしていくためには、人間性がとても重要です」

キャンパス内の啓心寮(順天堂大医学部提供)

 ◇1年間は全員が寮生活

 順天堂大学では、1年生全員が千葉県のさくらキャンパスにある「啓心寮」で、約1年間の共同生活を行う。開学以来、継続している伝統だ。「集団生活を通して、相手を思いやり、人の立場に立つ心を育てます。コミュニケーション力を高める上でも非常に役に立っています」

 スポーツ健康科学部の学生と共に生活することも、医学部の学生にとっては大きな刺激になっているという。「学生同士でキャッチボールをすると、ボールが相手まで届かないという集団が、オリンピックやアジア大会で活躍する人たちと身近に接するわけですから、すごくいい経験になると思います」

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