医学の窓辺

漢方薬『六君子湯』が慢性腎臓病による体重減少を抑制することを発見
~慢性腎臓病治療の新たな一助となる可能性~ 『Scientific Reports』に掲載

研究の内容
研究グループは、まず、アンジオテンシンII投与腎臓障害モデルを用いて、六君子湯がグレリン受容体の主要な下流経路であるSirtuin1を活性化させ、腎臓の炎症を抑制することを明らかにしました(Azushima K et al. Scientific Reports 2019)(文献1、図2)。
さらに今回、片側尿管結紮術(UUO)による腎臓障害モデルを用いて、六君子湯が腎線維化進行に伴う体重減少を改善するかどうかを検討しました。結果、このモデルにおいて六君子湯投与は腎線維化に対する明らかな抑制効果は認めなかったものの、腎障害の進展に伴う体重減少を抑制することが示されました(図3)。さらに、六君子湯投与により、腎臓でのグレリン受容体の発現量の増加を認めました。

これらの結果を統合すると六君子湯はCKD病態下において、腎臓でのグレリン受容体発現の増加、Sirtuin1活性化を介した抗炎症作用とともに、CKD患者さんの生命予後改善の鍵である体重減少抑制効果を発揮する可能性が示されました(図1)。

今後の展開
 有効な治療薬の開発が重要課題であるCKDにおいて、漢方薬「六君子湯」がCKD治療戦略の一つとなり得ることが期待されます。加齢によって腎機能が低下し、全身の筋肉量の低下などから患者さんのQOLが落ちることは近年重要な問題として取り上げられており、CKD患者さんの生命予後に関連する体重減少に対して、漢方薬「六君子湯」がその改善の手助けになることが期待されます。
 今後、漢方薬「六君子湯」のCKDにおける臓器連関作用機序についてさらに詳細に明らかにし、実際にCKD患者さんへの臨床応用も期待されます。

用語説明
*1 サルコペニア: 加齢や疾患により筋肉量が減少することで、全身の筋力低下および身体機能の低下が起こることを指します。

論文情報

文献1. 雑誌名:Scientific Reports
論文名:Effects of rikkunshito on renal fibrosis and inflammation in angiotensin II-infused mice.
執筆者名(所属機関名):Azushima Kengo1,2,#, Uneda Kazushi1,#, Wakui Hiromichi1, Ohki Kohji1, Haruhara Koutaro3,4, Kobayashi Ryu1, Haku Sona1, Kinguchi Syo1, Yamaji Takahiro1, Minegishi Shintaro1, Ishigami Tomoaki1, Yamashita Akio5, Tamura Kouichi1
Scientific Reports (2019) 9:6201 https://doi.org/10.1038/s41598-019-42657-1

#筆頭著者

執筆者所属先:
1:横浜市立大学 医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学
2:Duke-NUS Medical School, Cardiovascular & Metabolic Disorders Program
3:東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
4:Monash University, Department of Anatomy and Developmental Biology
5:横浜市立大学 医学部 分子生物学

掲載論文

雑誌名:Scientific Reports
論文名:Effects of Rikkunshito treatment on renal fibrosis/inflammation and body weight reduction in a unilateral ureteral obstruction model in mice
執筆者名(所属機関名):Wakui Hiromichi1,#, Yamaji Takahiro1,#, Azushima Kengo1,2, Uneda Kazushi1, Haruhara Koutaro3,4, Akiko Nakamura1, Ohki Kohji1, Kinguchi Syo1, Kobayashi Ryu1, Urate Shingo1, Suzuki Toru1, Kamimura Daisuke1, Minegishi Shintaro1, Ishigami Tomoaki1, Kanaoka Tomohiko1, Matsuo Kohei1, Miyazaki Tomoyuki5, Fujikawa Tetsuya1,6, Yamashita Akio7, Tamura Kouichi1.
Scientific Reports https://doi.org/10.1038/s41598-020-58214-0

#筆頭著者
執筆者所属先:
1:横浜市立大学 医学部 循環器・腎臓・高血圧内科学
2:Duke-NUS Medical School, Cardiovascular & Metabolic Disorders Program
3:東京慈恵会医科大学 腎臓・高血圧内科
4:Monash University, Department of Anatomy and Developmental Biology
5:横浜市立大学 医学部 生理学
6:横浜国立大学 保健管理センター
7:横浜市立大学 医学部 分子生物学

※本研究は株式会社ツムラ、一般財団法人 横浜総合医学振興財団、公益財団法人 先進医薬研究振興財団、公益財団法人 かなえ医薬振興財団、公益財団法人 MSD生命科学財団、公益財団法人 上原記念生命科学財団、公益財団法人 ソルト・サイエンス研究財団、公益信託 循環器学研究振興基金、および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)、横浜市立大学かもめプロジェクトなどによる研究助成、日本学術振興会の研究補助金を受けて行われました。

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