治療・予防

大人になって気付く発達障害 
周囲が一緒に支援模索を

 神経発達症(発達障害)は幼少期から症状が表れる脳機能障害で、大人になって突然発症することはないとされている。ところが、大人になるまで発見されず、大学進学後や就職時に気付き、深刻な問題となる場合がある。大人の発達障害について、「きょう こころのクリニック」(奈良市)の姜昌勲理事長に聞いた。 

生きづらさから、うつ病を発症することも

 ▽生きづらさに直面

 大人の発達障害は、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠陥・多動症(ADHD)に分けられる。対人関係・コミュニケーションの障害、状況に応じた対処の仕方を苦手とするのがASD。複数の作業の同時進行を困難とするのがADHDだ。

 子どもの頃に診断を受け、周囲の理解を得ながら成長した場合は、成長とともに目立たなくなるケースもある。

 しかし、気付かないまま成長すると、発達障害の特性である得意・不得意の差が大きい、対人関係が苦手などの点から「生きづらさ」に悩み、二次障害としてうつ病を発症することもある。

 大人の発達障害は、大学進学や就職、恋愛・結婚などがきっかけとなって見つかりやすい。高校までは時間割など決められた日課があり、教師や級友など限られた人間関係の中で過ごすため、発達障害の特性がカバーされ、個性として許容される部分も少なくない。しかし、大学では自身で時間割を組み立てて行動しなければならず、「クラス」がなく友人関係も多様になる。社会人になると人間関係はさらに複雑化し、周囲に合わせて空気を読み取るなど社会への適応が必要となり、生活に支障を来すのだ。

 「うつ病の発症を機に診断されるケースのほか、複数の作業を同時に進行させなければならない料理にとまどい、結婚後に気付く人も多いです」と姜理事長。

 ▽支援の工夫で症状緩和

 大人の発達障害の診断では、得意・不得意のアンバランスや言語理解、処理速度などの分析を、ウェクスラー知能検査を用いて行う。客観的な印象を、数値に置き換えて判定するのだ。姜理事長によると、大人の場合は幼少期や学童期の状況を知ることが重要だという。

 「できれば保護者や兄弟、配偶者や職場の方の来院をお願いしています。大人になって突然に表れるものではないので、現在の問題と幼少期からのエピソードに重なる部分はないかなど、時間をかけて面談し、総合的に判断していきます」

 治療は、主に薬物療法と心理療法の二つが挙げられる。薬物療法では、ADHDの症状を緩和させる薬が使われる。心理療法では、コミュニケーション力の向上を目的としたソーシャルスキル・トレーニングなどが望ましいとされるが、対応できる医療機関は少ないのが現実である。

 環境の調整も治療の一環になる。ASDの人は口頭での指示の解釈が苦手で、ADHDの人は複数の情報の処理が不得手だ。そうした弱点を理解して、指示や依頼はメモやメール、文書、図で示す、一対一で話し、メモを取るように促すなど、可能な対処法を具体的に考えていく。

 姜理事長は「家庭や職場など普段の生活の場面を、できれば家族や上司と共に思い描きながら、困りごとを確認し、現実的に可能な支援を考えていくことが症状の緩和につながります」と話している。 (メディカルトリビューン=時事)

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