変形性膝関節症のPRP療法
手術前の新たな選択肢に 済生会横浜市東部病院整形外科 谷川英徳医長
加齢とともに膝の軟骨がすり減り、痛みが表れる変形性膝関節症。近年注目されているのは再生医療で、薬で痛みが改善しないが、手術には踏み切れない患者に対する選択肢として期待されている。済生会横浜市東部病院(横浜市)整形外科の谷川英徳医長(現在は白井聖仁会病院整形外科部長)は「薬と手術の中間に位置する治療です」と説明する。
▽関節に痛みと炎症
変形性膝関節症は、太ももの骨である「大腿(だいたい)骨」とすねの骨である「脛骨(けいこつ)」のつなぎ目(膝関節)のクッションとして働く軟骨が摩耗したりして、膝関節に炎症が生じる病気だ。炎症による痛みや腫れが表れ、進行すると関節が変形したり、膝の曲げ伸ばしができなくなったりする。
治療は、膝の負担を減らすため、食事と運動による減量が基本となる。消炎鎮痛薬を内服する、膝関節をスムーズに動かすためにヒアルロン酸を膝に注射するといった保存療法も行われる。保存療法で痛みが改善しない、または関節が変形した場合は、最終手段として人工関節に取り換える手術療法が行われるが、「人工関節と聞いてためらう人もいます」と谷川医師。
▽血液の成分が痛みを軽減
そうした患者の新たな選択肢になり得るのが再生医療だ。その一つが患者自身の血液の成分を使う「多血小板血漿(けっしょう)(PRP)療法」である。
患者の血液から、炎症を抑え軟骨を守る成長因子を多く含むPRPを作製し、膝に注射する。「自分の血液から薬を作るようなものです。膝の痛みが軽減し、動かしやすくなると期待できます」(谷川医師)。軟骨のもととなる細胞を培養して移植する治療法ではないが、法律上は再生医療に分類される。
入院の必要はなく、治療に要する時間も1時間程度。注射に伴う膝の痛みや腫れが一時的に表れることがあり、患部の冷却などで対応する。
個人差はあるが、治療後1週間ほどで効果が表れる。1回の治療で痛みが軽減した状態が最長2年間続くとする海外の報告もあるが、根本治療ではないため、症状の変化を見て再度PRP療法を行ったり、手術を検討したりする。保険適用外で、治療費は病院ごとに異なる。
谷川医師は「関節の変形が進行している人では効果は弱まります。保存療法で痛みが改善しなかったら早めに行うのが望ましい」とアドバイスする。PRP療法を実施する医療機関は厚生労働省のウェブサイトに掲載されている。(メディカルトリビューン=時事)
(2020/07/24 07:00)