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長期の滞在者に帰国の動き―コロナ
~ワクチン条件で活動制約の懸念~

 新型コロナウイルス感染症により、海外渡航には一定の制約がかかっている。特に昨年暮れからの第3波以降、短期の出張や旅行は極めて難しい状況に追い込まれた。一方で、コロナの流行前から企業の駐在員や留学生として海外に長期滞在してきた人たちにとっては、長期間帰国できない状況が続く。このため、4月の年度替わりを機に、駐在員の帰国と交代要員の派遣を始めた企業も出てきた。

成田空港の検疫所で質問票に記入する乗客=2020年3月

 ◇欧米、一部東南アジア諸国で

 現在の検疫では水際対策の強化の一環として、日本への入国者は日本行きの航空機に登場する前にPCRなどの検査で新型コロナに感染していないことを証明した上で、帰国後も一定期間の自主隔離を求められる。このため、短期の出張や旅行はほとんどできない状況だ。

 一方、企業の現地駐在員など長期間の滞在を前提としている人たちはどうか。渡航者医療に詳しい東京医科大学病院(東京都新宿区)渡航者医療センターの濱田篤郎教授は「流行後に任期延長や派遣先の集約などの形で滞在を続けている事例が多かったが、そうした企業でも、延長による赴任の長期化や定例の人事異動などにより、帰国と後任者の派遣を検討せざるを得なくなっている」と分析している。

 このような動きは、欧米や一部の東南アジア諸国の任地で多い。アフリカや南アジアなどでは事情が異なり、既に駐在員を引き揚げさせて新規の派遣を諦めている企業も多い。理由として濱田教授は「現地の医療逼迫が原因だ。新型コロナだけでなく、この対策に追われてマラリア対策が手薄になったり、はしかのワクチン接種が遅れたりしており、感染症全体に対して対応が手薄になっている」と説明する。

 ◇接種の有無で差

ドイツでの新型コロナウイルスのワクチン接種(ベルリン、AFP=時事)

 日本人の海外での活動について、濱田教授が危惧している問題がある。新型コロナのワクチン接種の進行に伴い、国によってはワクチン接種を入国の条件にしたり、接種歴の有無で国内移動や社会活動を制約したりする、「ワクチンパスポート」と呼ばれる政策が取られ始めていることだ。

 「重症化や発症の予防が目的のワクチンだが、接種が進めば感染拡大防止の効果も認められるだろう。そうなると、ワクチン接種の有無で社会的な活動の規制に差をつける、という発想が出てくる。現在でも社会的統制が比較的強い国で部分的に導入されているようだが、接種が広まれば、多くの国が導入することが考えられる」

 この制度が広がると、採用された国に仕事や留学目的で滞在するためには、ワクチン接種が欠かせなくなる。しかし、日本国内のワクチン接種は、医療従事者から高齢者、重症化リスクの高い疾患を持つ人という順に進められる計画で、健康な成人への接種がいつ始まるかははっきりしない。日本でワクチン接種を受けて渡航するのは、なかなか難しい。

 ◇ワクチンの種類に注意

 「ワクチン接種が入国許可の条件でなくても、国内移動や会食、公共施設の利用などが制約されてしまえば、仕事や生活に大きな影響が出る。現地でワクチン接種を受けることが可能なら、接種を考えてほしい」と話す。

 その際に注意したいのが、渡航先で接種できるワクチンの種類だ。日本でも接種されているファイザー製のワクチンや、ほぼ同等とされている欧米諸国の製薬会社製のものであれば、効果や副反応について、それほど心配しなくて済むだろう。しかし、訪問先の国産ワクチンやロシア、中国製などのワクチンの場合はどうだろうか。

 この点について濱田教授は「ワクチンパスポートが広がれば、ワクチンの接種なしでは思うように渡航先で動けない可能性が高い。ロシア製や中国製のワクチンでも、世界的な医学雑誌に論文として効果などが報告されているものもある」とし、渡航前にできるだけ現地の情報を集め、『このメーカーのもので大丈夫か』などと、ワクチンに詳しい医師に相談しておくのが望ましい」とアドバイスする。(了)


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