医学生のフィールド

今こそ学生と大学の対話を!「コロナ時代の医学生の意識と生活の実態調査」最終報告書を公開

 全国の26大学の医学部自治会が加盟する医学連(全日本医学生自治会連合)が、2020年8〜9月と同年12月の2回、新型コロナウイルス感染症が医学生の学生生活に与えた影響を知るためのアンケート調査を実施し、最終報告が公表された。コロナ禍で学生生活の実態や問題が明らかになった。

 調査では1000人を超える医学生がインターネットツールを使用し、回答総数1437件のうち医学科1374人の回答結果を分析した。報告書には経済状況、学習環境、就職活動、学内の課外活動・人とのつながり、大学との関係・学生の精神的な状況の五つの項目でまとめられている。

 現在の経済状況では、少し悪い、かなり悪いと答えた人が21.1%を占め、2割以上の学生が経済的に余裕のない状況にいるほか、国や大学による学生への経済的支援について、81.1%の学生が「受給しなかった・できなかった」と回答した。

 各大学の採用した教育方法による学習到達度については過半数の学生が十分に学習できていないと感じていることが分かった。学習しやすさは、オンデマンドが最も高く、次に対面講義、ライブ配信、資料配布のみの順だった。オンデマンド形式の授業は何度も巻き戻して見られるので、継続してほしいという要望もあった。

 病棟実習で経験できなくなっていることは、「患者さんへの診察」を挙げた人が最も多く、これに続いて「回診」、「大学病院外での実習」、「外来見学」などが挙げられた。

 就職活動について、マッチングなどの情報提供、病院見学について、70%の人が不十分だと感じている。74%の学生が県外移動の制限や情報が不十分なことから就職への不安を感じていると回答した。 

 コロナ禍の影響で他者とのつながりに不安があるかという問いに対しては、新入生が44.5%、2年生以上で39.9%が不安の程度が高いという結果が出た。精神状態に関しては1回目の「悪い」が54.5%から24.5%も好転している一方、依然として強いストレスを感じている特定の学生に対しては精神的なサポートの必要性を訴える。

 精神状況を改善するための必要な支援と対策については、同学年と交流する機会が一番多く、仲間と交流できないことが大きな苦痛になっている。さらに、図書館の使用が制限されていることから、自宅以外の勉強場所の確保についても大変困っているという声が多かった。

 最終設問の自由記述では、「医療機関に十分な補助金を。医療従事者の給与、賞与は増額こそすれ減額されることがあってはならない」といった、医療機関への補助金を求める声が多数あった。さらに、「医療従事者への世間の当たりが強く、将来医師になることに不安を感じている」といったコロナウイルス感染に関する世間からの非難について自由記述も複数寄せられた。

 将来の医師像について、「臨機応変に冷静な対応し、患者の命を救える医師になりたいと思うようになった」という前向きな声もある一方で、「現場で働く人たちに対する差別や医療者への配慮がされておらず、医師になる自信がなくなった」といった医師になることを不安視する声もあった。 

 2020年、各大学では感染拡大防止のため講義のオンライン化やアルバイトや課外活動・他県への移動の制限で、医学生は生活の変化を余儀なくされた。この状況を乗り切るために「学生と大学の対話」が一層求められている。学生と大学が双方の意見を出し合い、解決に向かって話し合いを重ねることの重要性を訴えた。(稲垣麻里子)

【完成版】「医学生の声を届ける!コロナ時代の意識と生活の実態調査」最終報告書


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