大半は自然に治る―子どものチック症
~症状に困ったら受診を(東京大学医学部付属病院こころの発達診療部 金生由紀子准教授)~
不随意のまばたきやせき払いなど、ある動作や声を繰り返す子どものチック症について、東京大学医学部付属病院(東京都文京区)こころの発達診療部の金生由紀子准教授は「大半は自然に治ります。ただ、症状に困るときは受診を勧めます」と話す。
わざとではなく、動きや声を繰り返す
▽叱責や注意はしない
チック症は、突発的で速い、引きつるような動きや声を繰り返してしまう状態で、幼少期に表面化しやすい発達障害の一つ。運動チック(まばたき、首を振る、顔をしかめる、飛び跳ねるなど)と音声チック(鼻を鳴らす、せき払い、音や単語を繰り返し言うなど)に分けられる。
子どもの5~10人に1人に一時的に見られるが、大半は1年以内に自然に治る。1年以上続くケース(慢性チック症)もあるが、多くは思春期以降に症状が軽くなる。慢性チック症の一部は運動チックと音声チックの両方があるトゥレット症候群で、重症になることがある。
「子どものチックに気付いたときは、叱ったり注意したりして本人を嫌な気持ちにさせないこと。症状によって生活しづらい様子があれば、『大丈夫?』と声を掛けましょう」
▽安心な環境が大切
重症の場合は、社会生活が困難になったり、体の一部に痛みを感じたりするため治療を要する。症状は中等度でも、物事に集中できない、周囲の目を気にして幼稚園や学校に行きたがらないなど、受診を検討した方がいい場合もある。
主に問診や診察で診断する。診察中は症状が出にくいことが多いので、普段の症状や、誰がどれくらい困っているかを医師に伝えるとよい。金生医師は「特に低年齢児では、保護者が心配するほど本人はチック症を気にせず、伸び伸び育っていることもあります。本人と周囲の困り具合と、チック症に伴う問題にどのくらい対処できそうかを整理して、一人一人に合った支援や治療法を相談して考えていきます」と説明する。
治療の基本は、重症度にかかわらず本人、家族、教師などにチック症を理解してもらい、本人が安心できる環境を整えること。薬物療法やカウンセリングを行う場合もある。
「チック症はその子の特徴として受け止めることが大切。自分が周囲に受け入れられ安心・安全な状況にあれば、治療にも前向きになりやすく、自分らしく生きることにつながります」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/03/19 05:00)
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