解熱薬が効かないストレスによる発熱
周囲の理解が改善のカギ
「心因性発熱」とは、心理的ストレスにより体の中心部の温度が上昇する状態を指す。解熱薬が効かないだけでなく、倦怠(けんたい)感や不眠、頭痛、腹痛などのストレス性の不調を伴うことが多いため、たとえ体温の上昇がわずかでも、本人にとっては苦痛となる。国際医療福祉大学病院(栃木県那須塩原市)心療内科の岡孝和部長に聞いた。
心理的ストレスによる発熱。解熱薬が効かないのが特徴
▽高熱または微熱の持続
ストレスによって生じる心因性発熱には、二つのタイプがある。一つは、学校に行くなど特定のストレス状況で一時的に高熱が出るタイプで、時に40度近くに達する。代謝の盛んな10代の子どもに多い。
もう一つは、慢性的にストレスフルな状況が続く中で、38度前後の微熱が持続するタイプだ。仕事や家事、育児、介護など複数のストレスが重なって生じることが多く、成人によく見られる。自律神経が乱れやすい思春期の患者では、朝起きられないなどの症状を訴える起立性調節障害を併発しているケースも多いという。
ストレス要因で最も多いのは、過剰適応(周囲の期待などから、無理を続けてしまう傾向)や過重労働。さらに家族の不和や家庭内暴力、学校でのいじめ、発達障害などの精神疾患に関連した緊張状態の持続が関係している場合もある。
熱の出る仕組みが風邪を引いたときとは異なるため、医療機関で血液検査を受けても異常は見つからず、解熱薬が効かないのが特徴だ。特に子どもの場合、熱があるわりには元気そうに見えるため、仮病を疑われるケースすらある。しかし、岡部長は「心因性発熱患者は、熱が出るほどのストレスを感じ、ストレス反応として体温を上げているので、相当のエネルギーを消耗しています。そのため、わずかな体温上昇であってもつらいのです」と強調する。
▽熱中症にも注意を
発熱を訴え受診するのは、子どもなら小児科、大人なら内科が一般的だ。発熱を生じるさまざまな病気が除外され、心因性が疑われたら、より専門的な医療機関を受診することになる。
治療は、ストレスを緩和する薬物療法と、生活指導や環境調整、リラクセーションの練習などを、患者ごとに組み合わせていく。併発する病気があれば、その治療も進める。
「子どもの場合は、学校で発熱した時の対処法(何度になったら体育を休む、帰宅するなど)を、事前に医師と家族や学校側でよく話し合って決めておくと安心です」。体温が上昇しているので、熱中症になりやすい点にも留意が必要だという。
岡部長は「心因性発熱と診断されたら、専門的治療を受けると同時に、今までの生活を見直すことが大切です。家族や周囲は、本人のストレスや緊張状態、精神的負担感が軽くなるよう理解と協力をしてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)
(2019/12/17 07:00)