Dr.純子のメディカルサロン

「デコパウチ」に託すオストメイトの思い
~アートで照らす人工肛門の日常~


小学校での授業風景

小学校での授業風景

 ◇小学校でデコパウチづくり

 中島 そんな中、オストメイトでも、そうでなくても、どちらであるかをカミングアウトしなくても、参加する全員がまったく同じスタンスで参加できるインクルーシブな啓発イベントとして、デコパウチ作りが生かせるのではないかと仲間と考えました。そして先日、認定看護師の入江眞由美さん母娘の企画で、京都のとある小学校にお邪魔しました。

 4年生と6年生の合計40人が参加してくれました。「この中に3人オストメイトが居ます!さて、だ~れだ?」というクイズから始まり、入江看護師による「オストメイトってどんな人?」という講義の後、当事者の話があり、参加者のみんなから質問を受け、最後に全員でデコパウチを作りました。

京都の小学生の力作!

京都の小学生の力作!

 使用したのは、デコパウチへの思いに共感してくださる装具メーカーが提供してくれた廃棄予定(使用期限が切れているものなど)のパウチです。当事者が装着するものではないので、デコレーションの画材や手法にも制限がありません。SDGs的な試みの一環として、廃棄予定の化粧品やマニキュアを画材として使うことはできないかとも考えています。

 講義の後、子どもたちが列を作って自作のデコパウチを届けに来てくれました。小学校で派手にいじめられていた私は(笑) 、真っすぐこちらの目を見て作品を手渡してくれる子どもたちと時間を過ごせて、心の傷が少し癒えたような気持ちになりました。

情報番組でも紹介された

情報番組でも紹介された

 ◇体験語るきっかけに

 中島 デコパウチはNHKの情報番組「ニュース シブ5時」でも取り上げていただきました。小学校への講義にも取材チームが同行してくださって、ストーマに関する啓発活動の仲間でもあるディレクターの宮崎玲奈さんによる丁寧な取材でデコパウチ特集が放送されました。

 司会の久保田祐佳アナウンサーのおばあさまはオストメイトだったそうです。日本には約21万人のオストメイトがいると言われていますが、日本最大のオストメイト支援組織である「日本オストミー協会」の正会員は7000人です。

 オストメイトとしての生き方は人それぞれですし、無理にカミングアウトをする必要も、コミュニティーに属する必要もありませんが、オストメイトについて広く知ってもらうためには、当事者が自分なりの言葉で経験とメッセージを伝えていくことが、「みんなにとって、ちょうどいい」世の中をつくる第一歩ではないかと思います。デコパウチを通じて、オストメイトだけに限らず、ご自身やご家族の体や心について話すきっかけが生まれたら、こんなにうれしいことはありません。

 海原 オストメイトであることを伝える人がほとんどいないので、一般の人が知らないことが多いんですよね。昨年はこうしたデコパウチの展示会も開催なさったのですね。

 中島 はい、仲間と「デコパウチコレクション」というオンライン展示会を企画開催しました。デコパウチを写メに撮って送ってもらい、全員の作品を掲載してみんなで鑑賞しようというイベントです。

 初めてのイベントにもかかわらず、地方新聞やウェブメディアでも紹介していただき、260以上の作品応募がありました。

 海原 オンラインで展示会の作品、拝見しました。とてもすてきで、きれいですね。

オンライン展示会「デコパウチコレクション」には多くの作品が集まった

オンライン展示会「デコパウチコレクション」には多くの作品が集まった

 ◇理解を得る難しさも

 中島 ただ、新しいものの見方や価値観を形にしていく過程では、思いも寄らない言葉を投げつけられることがあります。

 「こんなに便利になった装具に何の文句があるんだ」「外見にケチをつけるなんてぜいたくな」「誰かにパウチを見せるつもりなのか、下品な」など、デコパウチの目的が伝わっていないことによる誤解が生んだ言葉もあれば、「診察や介護の際にはパウチが透明でないと症状を確認できず不便」「そもそも透明ではないパウチがあることを知らなかった」「手先が器用ではない/抗がん剤の治療で手足にしびれがあるので、そんな器用なことは到底できない」というものも。異なる立場からの言葉には、オストメイトとデコパウチをより広く浸透させるためのヒントが隠れているように感じます。

 海原 パウチが透明でないとだめな人のためには、他の方法でご自分が快適に過ごせる選択肢もあるといいですね。手先が器用でない人や手が震える人も楽しめるアイデアなどもあると広がりができるかなと思いました。

多目的トイレにも表示されている「オストメイトマーク」(ピンクと水色のもの)

多目的トイレにも表示されている「オストメイトマーク」(ピンクと水色のもの)

 ◇共感を呼ぶ発信を目指して

 中島 「価値観が違うと冗談も通じないのだな」と驚いたのは、デコパウチを楽しむ友人がSNSで、「こんなにかわいいと取り換えるのがもったいないよね」と冗談でしゃべっていたのを真に受けて、怒ってしまう人がいたことです。

 また、「障害者と健常者」「当事者と支援者」「オストメイトと非オストメイト」のような呼び方ではなく、両方の立場を平等に呼ぶ方法はないかと考えた結果、「有袋類(オストメイト)と無袋類(オストメイトではない人)」と冗談めかして呼んでみたら、それがどうにも「気に入らない」という人もいました。

 海原 ユーモアやジョークは客観的に自分を見るという精神的なゆとりが必要で、困難な状況を乗り越えて初めてユーモアにたどり着けますから、その状況と闘っている途上の場合はなかなか難しいかもしれないですね。いろいろな状況の人がいらっしゃるから大変だと思います。

 でも気持ちを明るい方向に向け、そして多くの人と手をつなぐのはすてきなこと。それにこうした活動でストーマについて正しい知識を普及することはとても重要だと思います。

 中島 そうですね。どんなに言葉を尽くしても、こちらの思いが伝わらないことの方が多いですが、それでも私が自分なりの言葉で発信を続けるのは、自分が信じる言葉や行動に共感してくださる人がきっとどこかにいるはず、と信じているからかもしれません。

 日々いろいろなことが起きますし、気持ちにも体にも波があって当たり前ですから、悲しい時に自分の気持ちを偽る必要はないと思うんです。ただその中でも、自分がすてきだと思える物や人を見つける感性を大切にできるか、その発見がさらに新しい出会いを連れて来てくれると信じられるか、さらにそのご縁が何らかの形で花を咲かせるかもしれないと楽しみに待てるかというのは、自分の心の置き方次第で少しずつ変えられるのではと感じます。

 海原 楽しいデコパウチがたくさんありましたね。勇気がある素晴らしい活動、応援しています。(了)

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