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コロナ禍で「巣ごもり便秘」
~生活見直し対策を~ 医学博士 福田千晶

 コロナ禍は、経済への影響のみならず健康への影響も大きいと感じます。この連載でも、新型コロナウイルス感染の拡大が影響していると思われる健康問題を幾つも書いてきました。今回もその一つである「便秘」を挙げてみます。

生活の変化はさまざまな健康問題に影響(EPA時事)

 ◇自粛生活で増えた便秘

 昨年から新型コロナウイルス感染拡大に伴い、人々の暮らしは変化しました。在宅時間が増えることで需要が伸びたことに関しては「巣ごもり需要」と言われます。コロナ禍の自粛期間に増えた便秘に関しても、俗に「巣ごもり便秘」と称されています。

 昨年の8月か9月ごろから、診察室でも自覚症状で便秘を挙げる人が増えました。しかも、「今までは、便秘とは無縁だったけれど、最近はスッキリしなくて…」という便秘初心者も多いように感じています。

 便秘は健康に見える人にも多い自覚症状です。日本内科学会では「3日以上排便がない、もしくは毎日排便があっても残便感がある」という状態を便秘としています。便秘は肥満、生活習慣病、ある種のがん、メンタル不調などの原因にもなります。さらに、免疫機能低下の一因になるとも考えられていますから、コロナ禍では軽視できない健康問題の一つなのです。

小まめに水分補給し、腸内細菌のバランス整える食事を

 ◇便秘の原因

 昨年から今年にかけて、自覚症状に「便秘」と答える人たちに思い当たることを尋ねると、幾つかの原因があることに気付きます。

 【運動不足】「スポーツクラブの時短営業や閉鎖で行けなくなった」「感染が怖いから、ダンスレッスンはやめた」「リモートワークになって完全に運動不足」というような意見が主流です。運動だけではなく、外出の機会が減って活動量が低下していることも、腸の健康と関係がありそうです。

 【水分不足】マスクを着用していると喉の乾きを感じにくく、小まめな水分摂取もしにくくなります。また、換気を重視する場所では窓や扉を開けているため、クーラーの効きが悪く、汗をかくことも増えました。体内は、かつての夏よりも脱水になり、腸の内容物が硬くなって排出されにくくなっていたのでしょう。

 【食生活の変化】食料品の買い出しを週1、2回に減らしている人も多く、どうしても野菜や果物などを節約しがちで、食物繊維が不足しがちです。また、暑い夏はサッパリしたものしか食べられなくて「冷たい麺類だけ」という食生活を続けると、食物繊維が足りないだけでなく、脂質も不足します。油脂分が足りないと、腸内でやがて便になる内容物の進みが悪くなり、スムーズに排せつに至らず便秘になります。水分と食物繊維と油脂分が不足しがちな夏は、便秘になりやすいのです。

 「出勤する日は、昼ご飯は社員食堂や定食屋で食べるけど、リモートワークでは出かけるのも面倒だし、カップ麺かレトルトカレーばかり」という話もよく聞きます。外食は健康に良くなくて、家で食べる方が健康的なイメージがありますが、実際はそうとも限らないようです。

 【不規則な生活】リモートワークは通勤時間を節約できるメリットがある半面、ついつい朝寝坊しがち。その結果、朝食や通勤のための歩行といった朝のルーティーンワークが省かれることもあり、胃腸が目覚めず排便の機会を逃します。また、「いつもは朝、家族が出掛けた後がトイレタイムだったけど、家族がリモートワークやリモート学習で家にいると、そのタイミングがない」という悩みも聞きます。

 【ストレス】「コロナストレス」という言葉もあるように、ストレスが多いこの頃です。仕事や生活の変化、コロナ感染の恐怖、旅行やイベントなどでストレスを発散できない、マスク生活は不快、などストレスの原因はいろいろあります。腸はストレスの影響を受けやすい臓器の一つです。ストレスによって下痢をしやすくなる人もいますが、便秘をしやすくなる人もいて、「巣ごもり便秘」の原因と一つと思われます。

腹筋運動にはマッサージ効果も

 ◇巣ごもり便秘の対策

 便秘解消のために、ストレスをためないことも大切ですが、具体的な方法はなかなか難しいです。ですから、まずは行いやすい運動をすることから、始めてはいかがでしょうか?

 ウオーキングやジョギングに加えて、おなかをひねるようなストレッチを行ってみましょう。体をひねるポーズもある上、ストレス対策にも役立つヨガもお勧めです。腹筋のパワーでおなかを外側からマッサージする効果もあるので、腹筋運動も行いたい運動です。

 食事は朝食を含めて規則正しい食事をして、野菜や果物や海藻で食物繊維を取り、ヨーグルトや、みそなどで腸内細菌のバランスを整えるように心掛けましょう。

 便秘の人が「食物繊維をたっぷり取ろう」と、野菜サラダを急に大量に取り過ぎると、かえって便秘が悪化することがあるので要注意です。多くの野菜に含まれる不溶性食物繊維は便のかさを増やすため、便秘解消に効果的ですが、既に腸の動きがとても悪くて便秘になっている人は、かえって便が腸内で詰まり、便秘が悪化することもあります。他の方法で腸の調子を整えつつ、野菜は徐々に摂取量を増やすことが大切です。さらに、サラダに使うような野菜だけではなく、水溶性食物繊維である根菜や海藻も取りたいものです。

 買い物に行く回数を減らしている人は、冷凍食品の野菜や根菜、乾燥カットわかめなどを使うこともお勧めです。料理が苦手な人は、お総菜を購入することで、食べる食材の種類を増やせます。コンビニ食でも、おひたしや煮物もあるので、上手に選べば腸の健康に役立つ食事はできますから工夫してみましょう。

 腸内環境を整える効果が期待できるヨーグルトも毎日取りたい食品です。規則正しい時間に、バランスの取れた食事ができることは腸の健康と便秘対策に必須です。

 気温が下がり、熱中症の心配が少ない日は水分摂取を忘れやすいので、気を付けてください。冷えも便秘の原因になりますから、クーラーによる冷えや気温の変動にも対応しやすい衣服を準備しておくことも必要です。

 まだまだ巣ごもりの日々は続きそうですが、生活を見直して快便生活を送りましょう。その人なりに、なにかできることはありそうですね。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)
 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。

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