治療・予防

ヘルプマークの活用を
~助け下手、助けられ下手な日本人(大阪公立大学大学院 橋本博文准教授)~

 電車やバスの中などで、赤地で白く十字とハートが描かれた「ヘルプマーク」を身に付けている人を見掛けた人は多いのでは。最近の調査で周知率は8割程度とされているが、まだまだ有効に活用されているとは言えないようだ。理解を促すにはどうしたらよいのだろうか。ヘルプマークに詳しい大阪公立大学大学院(大阪市)文学研究科の橋本博文准教授に話を聞いた。

ヘルプマーク。裏(右)に対処法や緊急連絡先などを記入する

ヘルプマーク。裏(右)に対処法や緊急連絡先などを記入する

 ◇ヘルプマークとは

 義足や人工関節を装着していたり、難病を患っていたりする人、妊娠初期の女性らは外見から分かりにくくても、援助や配慮を必要としていることがある。ヘルプマークは、そのような人が支援を得やすくなることを目的に作られ、「助け合いのしるし」とも呼ばれている。

 ただし、実際にはヘルプマークが効果を十分に発揮しているとは言いがたい。「心の文化差」を研究してきた橋本准教授は「英国の慈善団体の調査(2021年)では、日本人の『人助け指数』は世界114カ国の中で最下位でした」と話す。

 「日本人は助け下手、助けられ下手な面がある。身内に対する人助けはともかく、見知らぬ他者にはハードルが高く設定されている印象です。いわゆる忖度(そんたく)が働いてしまうためでしょう」

 助けてほしい側は「助けてと言ったら迷惑じゃないか」、援助する側は「助けてほしそうだけど、声を掛けたらおせっかいじゃないだろうか」と思ってしまう。その結果、互いに声を掛けられずに終わることが多いと推測する。

 ◇なぜ普及しにくいのか

 橋本准教授は、ヘルプマークが活用されにくい原因を調査すると同時に、どのような働き掛けが理解を促すのかを調べた。大学生121人を対象に、ヘルプマークの説明文を3種類用意し、アンケートを行った。

 その結果、〔1〕マークの定義のみ〔2〕定義に加え、思いやりのある行動が配慮を必要とする人の安心につながる〔3〕定義に加え、助け合いの社会をつくることは将来的に全ての人の安心につながる―という説明のうち、〔3〕を読んだ人でとりわけ肯定的な「理解」のスコアが高く、「抵抗感」のスコアが低くなった。

 こうした研究結果を踏まえ、橋本准教授は今後、ヘルプマーク周知のためのポスターやショートムービーを作ることを検討中という。「ヘルプマークを見たら、ぜひ『親切という名のおせっかい』を焼いてほしい」(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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