Dr.純子のメディカルサロン

喫煙とがん 大塚俊昭准教授

 たばこ企業との関連で変わる結論

 海原 日本たばこ(JT)のホームページには、受動喫煙は非喫煙者の疾病と関連があるという統計的関連は証明されていないという趣旨の記載があります。これについて先生はどのように捉えていますか?

EPA時事
 大塚 受動喫煙の健康への影響に関しては異なる結論になる論文が多く、こうした論文についての非常に興味深い「レビュ―論文」があります。

 海原 レビュー論文について説明していただけますか。

 大塚 レビュー論文とは、これまで発表されてきた論文の結論をまとめ、それをある一定の基準で検討する、というものです。具体的に言うと、「受動喫煙は健康への悪影響がない」とする論文と「受動喫煙は健康に悪影響がある」という結論の論文に分類し、それをさらにたばこ企業から研究資金を得ていない著者の論文と、たばこ企業から研究資金を得ている著者の論文に分類します。

 すると、全部で106の論文のうち、たばこ企業から研究資金を得ていない著者の論文では94%が「健康への悪影響はある」との結論を出しているのに対し、たばこ企業から研究資金を得ている著者の論文では87%が「健康への悪影響がない」と結論付けているのです。

 たばこ企業から研究資金を得ている著者が受動喫煙を「健康への悪影響なし」と結論付ける可能性(リスク)は、研究資金を得ていない著者の88倍という驚くべき結果になっています〔資料5〕。いま医学研究で重要視されている利益相反→用語解説)の典型的な問題例と言えます。

 海原 これはすごいですね。企業から資金提供を受けること自体は決して悪いことではありません。しかし、医学の研究において、論文の著者はその家族を含めて、研究への関連が想定される企業との利益相反を開示することが義務付けられていますから、それを十分把握した上で研究や調査の結論を受け止めることが大事ですね。

→「ハヤミミ」では「たばこのイメージ」を掲載しています。

資料5
 

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