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中高年の運転に潜む危険
低い緑内障への認識


 ◇眼科受診しない傾向

 緑内障の初期は左右の眼球で進行度が異なることが多い。視野の隅にゆがみや欠損が生じても、多くの人は無意識のうちに視点を動かすことで、視野の不良を補ってしまい、なかなか症状に気付かない。特に症状が出ないが視神経の異常が進行している50~60代は、健診などで異常が指摘されたとしても、なかなか眼科を受診しない傾向があるようだ。

 日本緑内障学会評議員で井上眼科病院(東京都千代田区)の井上賢治院長は、治療の遅れが招くリスクを指摘する。

井上賢治院長
 「本来は、症状が出る前から治療を始めることができれば効果も大きい。視野に支障がない段階はもちろん、視野の欠損を補っていられる間は、患者が症状を自覚せず、検査も治療も受けない。その間に症状が進行し、補いきれなくなるまで視野欠損が拡大して初めて緑内障だと、気付くことが少なくない」

 現在緑内障を完治させる治療法はない。現在行われている眼圧を下げる点眼薬などの投薬治療や手術は、症状の進行を遅らせることが目的とされている。井上院長は「早期に緑内障を発見して治療を始められれば、それだけ症状進行も遅らせて視野を保つ期間が長くなる。視野欠損が生じていない段階で治療を開始するのが理想」と話している。

 ◇眼底検査の重要性

 早期発見に重要な役割を果たすのが、職場や地域での健診だ。緑内障の発見には以前は眼圧を測定して標準値を上回ると眼科受診を勧められていた。しかし、眼圧が正常なのに緑内障を発症する「正常眼圧緑内障」=用語説明=の患者が多くいることが分かり、現在では眼底部の視神経に異常がないか、眼底部の画像を医師が確認する「眼底検査」の役割が大きくなっている。

 ただ、画像診断は医師個人の力量や経験によって差が生じてしまうため、眼科専門医による評価が欠かせない。「加齢に応じて神経の変化は生じやすくなるので、一度の検査で『異常なし』と判断されても安心しない。できれば1年に1回は、眼科専門医に眼底の様子を診てもらってほしい」と井上院長は強調する。

 ◇運転やめることも考える

 しかし、健診などで異常が指摘されても、症状が進行して日常生活に支障が生じるまでは、なかなか定期的に眼科を受診する人は多くはない。特に治療を開始すればより効果が期待できる50~60代は、仕事や社会的活動に忙しく、「眼科に来てさえくれれば、いろいろ打つ手もある。だが、なかなか通院という前提条件を満たしてもらえない」と嘆く。周辺視野に障害が生じる初期症状が出始めてからも、「年齢のせい」「疲れやすくなったのか」と、済ましてしまうことも少なくない。

 緑内障と診断された場合は―。「まずは眼圧を下げて視神経への負担を軽減すること。これは正常眼圧緑内障でも同じだ。最初は点眼薬、効果が弱ければ複数の点眼薬を組み合わせる。次は内服薬を加えることになる。即効性は限られているが、毎日続けることで確実に効果を上げることができる」と井上院長。病態によっては、レーザーなどを使って虹彩に小さな穴を開け、内部の圧力を下げる手術の適用も可能だ。

 重要なのは、病状の進行度の把握だ。眼球を動かすことで視野欠損を補うには限度があり、視野欠損を自覚する段階が来る。「欠損が自覚できる段階になると、日常生活への影響は格段に大きくなる。進行を少しでも抑える一方で、自動車の運転をいつやめるかを考える。そのためにも定期的な診療は欠かさないでほしい」と井上院長は言う。

 用語説明「正常眼圧緑内障」 眼球が形を保つためにかかっている圧力(眼圧)が正常値(10~20mmHg)であっても、眼底部などの視神経が圧迫・障害されて視野の欠損などを起こす。国内では緑内障患者の7割を占める、という試算もある。眼圧を下げると症状の進行を抑制できるため、治療自体は眼圧異常を伴う緑内障と変わらない。(了)

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