治療・予防

異物誤飲で消化器に傷
魚好きは特に注意

 魚の骨などの異物を誤って飲み込むと、まれにだが腸や肛門などに刺さって穴が開き化膿(かのう)することがある。このうみの塊が「膿瘍(のうよう)」で、腹部に生じたものを「腹部膿瘍」と呼んでいる。赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)の高原秀典外科部長に話を聞いた。

 ▽魚や鶏の骨を誤飲

魚の骨の誤飲が手術を招くことも
 農林水産省が2013年に実施した調査によると、「魚介類を食べるのが好きか」との質問に、「好き」または「どちらかといえば好き」と答えた人の割合は85・6%に上った。魚好きが多いためか、日本人が食事の際に誤って飲み込む異物の約半数が魚の骨という調査結果もある。

 高原外科部長は「魚の骨以外では鶏の骨も多いのですが、中には、くわえていた爪ようじを気付かない間に飲み込んでいたというケースもあります」と話す。

 飲み込んだ魚の骨などはさまざまな場所に刺さって穴が開き、細菌に感染し炎症を起こしてしまう可能性がある。まれにだが小腸と大腸の間にある弁や肛門付近にまで達することもある。「異物が胃や腸などの壁を貫通し肝臓など他の臓器を傷つけることもあります」

 ▽ゆっくり表れる痛み

 膿瘍による主な症状は異物が刺さった場所の痛み、発熱、倦怠(けんたい)感などだ。膿瘍は1週間ほどで徐々にできていくので、症状はゆっくり表れる。そのため、肛門が座っていられないほど痛い原因が魚の骨や爪ようじであるとは思い至りづらい。痛みは一度生じると継続するのが特徴で、膿瘍が大きくなるにつれて増すという。

 異物の確認は、超音波検査やコンピューター断層撮影(CT)などで行う。治療では外科手術によって膿瘍を切除し、異物を取り除く。細菌感染を起こしやすいため、手術後2週間程度は入院して経過を観察する必要がある。

 魚好きの人は魚を食べる機会が多い分、リスクも高い。ただ、問診だけで異物の誤飲が痛みの原因だと特定するのは難しい。認知症の患者の場合は本人が食べたものを覚えていないこともある。高原外科部長は「認知症を持つ高齢者などに魚料理を出す際には、骨をきれいに取り除くなどの配慮をしてあげてほしい」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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