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日本人の幸福度はなぜ低いのか 島井哲志・関西福祉科学大学心理科学部教授

 「今、幸せ?」。そう聞かれたら、あなたはどう答えますか。国連の世界幸福度報告書2018年版で、日本は104カ国中54位です。この位置は先進国と自負する日本として、どうなのかなという気がします。そこで、「どうすれば人々はもっと幸せになれるのか」を追究する学問「ポジティブサイコロジー」の第一人者であり、幸せについて多くの研究をしている関西福祉科学大学心理科学部教授の島井哲志先生にお話を伺いました。

 島井先生(右)と筆者

 海原 2018年版の結果をどうお考えですか。

 島井 ポジティブサイコロジーが興味を持っている領域の一つが幸福感で、私も非常に注目しています。この世界幸福度調査は12年から発表され、その後は毎年調査されていますが、日本は一貫して低い順位で、今回もそれほど大きく変わっていません。ということで、この結果を見ても、そうだろうなというのが正直な感想です。

 その人がどのくらい幸せを感じでいるのかという主観的幸福感は、この他にも何問かの質問に回答するものなど、幾つかの方法で測定されています。いずれの調査でも、国別に比較すると、一貫して日本人の幸福度は高い方ではありません。

 私が気になるのは、日本の幸福度が低いことと、日本の自殺率が高いことにつながりがあるのではないかということです。

 幸福感の主要数値は低くない

 海原 幸せ度というと、すぐに経済状況や社会的地位などの外的条件を思い浮かべる方が多いように思います。幸せイコール収入を増やす。それがかなわないと心が落ち込んで悩むというパターン。こうした思考性が幸せを感じられない要因かと思うことがありますが。

 島井 世界幸福度調査では、先に説明した主観的な幸福感の値が経済力、健康寿命、利用可能な社会支援、寄付活動、社会正義の認識、人生選択の自由という六つの要因から、どのくらいうまく説明できるのかの推計を発表しています。その結果、多くの国で社会的支援と経済力、健康寿命の三つが大きな力を持っていることが示されています。

 このことから、私たちの幸せには、経済力と周囲の支援、健康状態の三つがまずは大きな影響を与えていると考えてよいでしょう。これらの分析結果から、他の国と日本とを比較すると、日本は健康寿命だけでなく、経済力も支援もそれほど低いわけではありません。

 海原 条件がそろっているはずなのに幸せ度が低いということは、何か他に不足している要素があるのでしょうか。

 島井 全体の中で見れば限定された割合ですが、他の国では、寄付による社会貢献や社会正義の認識が幸せに対して一定の役割を持っているのに、日本ではほとんど力を持っていません。

 学生に語りかける島井先生
 何年にもわたって同じ話題が国会で取り上げられたり、率先して法律に従うべき中央官庁で障害者雇用数を水増ししていたりといったニュースを見聞したりすると、社会的正義への信頼感は揺らいでしまいます。

 これを逆に言えば、私たちが困っている人たちにもっと熱心に寄付するようになり、社会的欺瞞や政治的癒着を感じることのない、信頼できる社会を築くことができれば、日本人の幸福度が上がる可能性を示していると考えられます。

 日本人のもう一つの特徴は、これら六つの要因では予測できない幸福感の部分がほとんどないということです。これは先進諸国の中で際立っています。言い換えれば、日本人の幸せは、健康で周囲に支援してくれる人がいて、そこそこのお金があることで成り立っています。希望や生きがいなど、6要因以外の影響力は小さいのが現状なのです。

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