Dr.純子のメディカルサロン

水車でJAZZを奏でる不思議
バラバラだったことが50代で一つになった ジャズ演奏家・岡淳さん

水車と楽器が融合して音楽を奏でる

水車と楽器が融合して音楽を奏でる

 ジャズ演奏家、岡淳さんとの出会いは2013年のクリスマスです。場所は岩手県陸前高田市で地元の方々の地域拠点になっている「陸カフェ」。岡さんがこのカフェでライブを行い、私も飛び入りさせていただきました。

 当時、私は東日本大震災後の心のケア事業で東北沿岸部を回っていて、岡さんは「ジャズフォー東北」のメンバーとして東北地方で演奏ツアーをしていました。その後、岡さんが「水車を使ってジャズ演奏」という途方もない企画を進めていることを知り、今回、お話を伺いました。

 ◇圧倒された強烈な記憶がきっかけ

 海原 水車でジャズ。私も最初、びっくりしました。学生時代から考えていたということですが、この発想はどこから生まれたのですか。

 岡 学生時代のゼミが環境問題やエネルギー問題をテーマにしていて、水車や炭焼きなど伝統技術のことを調べていました。その中で、東京都三鷹市に保存されている「しんぐるま」という水車を見に行った時に、先人たちの知恵が凝縮された水車精米製粉装置の精巧さ、無数の木製歯車の美しさに圧倒された強烈な記憶がそもそものきっかけです。

 その後、プロのミュージシャンとして活動を始め、何年かたったある時、「あの精米製粉装置を楽器に置き換えたら、誰も見たことのない『音楽を奏でる水車』ができるんじゃないか」というアイデアに至ったんです。

 海原 長い間温めていた企画を13年にいよいよ始めたのには、何かきっかけがあったのでしょうか。

2013年クリスマスのライブに筆者(中央)も飛び入り出演させていただいた=岩手県陸前高田市

2013年クリスマスのライブに筆者(中央)も飛び入り出演させていただいた=岩手県陸前高田市


 ◇夢語るだけの人になりたくなくて

 岡 「水車で音楽を」というアイディアの実現には、たくさんの人の協力と、まとまった資金が必要です。だから「有名になったらやろう」と思っていたんです。でも、有名にならないまま年月が過ぎ、このままだと酔った時に「自分にはこんな夢がある」と語るだけの、いかさないおじさんになってしまうと思って、50歳を目前に、駄目でもいいから着手だけはしようと思いました。


 海原 まず水車を作ることから始めるんですよね。ドラムや木琴、鉄琴などはレオナルド・ダ・ビンチのスケッチを基に製作なさったそうですが。こんなアイデアはどうやって思い付くのですか。

 岡 僕はそもそも、ものづくりも、機械のことも、設計も素人なので、最初は基本的なプランだけを出して、それに基づいてアーティストや大工さんが試行錯誤しながら、アイデアを出し合って作ってくれたり、設計の専門家が図面を引いてくれたりしていました。今は僕もいろいろ勉強したので、稚拙ではありますが、設計図を書いたり、見よう見まねで作ったりもしています。

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