血流悪化で手足に障害
予備軍も要注意-閉塞性動脈硬化症
動脈硬化により、手足、特に足の血液の流れが悪くなり、重症化すると切断に至る場合もある「閉塞(へいそく)性動脈硬化症(ASO)」。患者数は増えており、高齢者や喫煙者、生活習慣病のある人は発症の危険性が高まることが分かっている。医療法人財団順和会山王メディカルセンター(東京都港区)の重松宏血管外科統括部長に、発症の原因や症状、早期発見のポイントについて聞いた。
閉塞性動脈硬化症の症状の見分け方
▽間歇性跛行がサイン
動脈硬化が進むと、狭くなった血管がやがて詰まり、心筋梗塞や脳梗塞につながることはよく知られている。ASOは、手や足の血管の動脈硬化により手足にさまざまな障害が表れる病気だ。
重松部長は「生活習慣病の中で、最も強力な危険因子となるのが糖尿病です。糖尿病性腎症が進行した透析患者さんに多い点もASOの特徴です」と説明する。
自覚症状のない例も多いが、重松部長は「患者さんの訴えで最も多いのは、間歇性跛行(かんけつせいはこう)です」と話す。歩行中に足が痛くなって歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる歩行障害のことだ。
「治療の基本は、血行を良くするための運動療法と、血液を固まりにくくする抗血小板薬などによる薬物治療です。また、心筋梗塞や脳梗塞の危険性も高まるため、並行して合併症を予防するための対策が重要になります」と重松部長。
薬物や運動療法でも症状が改善しない場合は、途絶えた血流を回復させるために、外科手術や血管内治療で血行再建を行う。ただし、潰瘍や壊死(えし)が広がったり、全身状態が悪化したりすると血行再建はできない。その場合、足の切断を余儀なくされる例もある。
▽境界型でも高い死亡リスク
ASOの早期発見には、両腕、両足首の血圧を測定し、血管の詰まり具合を調べる「足関節上腕血圧比(ABI)検査」が有用だ。正常値は1.00~1.40で、0.9以下だと狭窄(きょうさく)や閉塞などが疑われ、死亡リスクも高くなる。0.91~0.99までは境界型と呼ばれ、足に症状がない人でも、死亡リスクは正常値の人に比べて高いとされる。
境界型つまりASOの予備軍に対し、重松部長は「生活習慣病の治療を続けながら、歩く習慣を身に付けることです。ASOを発症していると血流が低下して、足の筋肉が痩せてきます。痛みやしびれなどの自覚症状がなくても、足の太さの左右差、温度差がある場合には、血管外科や循環器内科を受診しましょう」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/02/09 05:55)