2024/11/06 05:00
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私は以前から患者さんに、「病院に行くときにこれさえ持って行けばOK」というような通院セットを作っておくことをお勧めしています。保険証や診察券、お薬手帳や各種医療証、過去の検査結果などをまとめて一つのケースに入れておくのです。
「通院セット」(著者提供)
カードの入るスロットが多めで、お薬手帳のような冊子が入り、かつボールペンを収納できるようなタイプが理想的です。
患者さんのご年齢によっては、昔使っていた母子手帳ケースが代用できることもあります。何年も現役を退いていた思い出の品を、今度は自分の受診に使うことができるということで、名案だと言ってくださる方もいます。
特にご高齢の方の場合、飲んでいる薬が多く、通院している医療機関も複数あることが多いでしょう。こうしたセットがあれば、慌てているときでも忘れ物をしにくくなるのです。
◇診察券が大切である意外な理由
特に準備不足になりやすいのが、救急車を呼んで病院に行くケースです。救急車を呼ぶくらいですから、ご本人もご家族もたいてい慌てています。病院に搬送され、私たちが診察しようとしたところで、「お薬手帳がないので普段飲んでいる薬が分からない」という事態に遭遇することもよくあります。
また、かかりつけのクリニックが分からず困る、といったこともあります。私たち医療者が、患者さんが普段どんな病気を治療していて、その病気がどのくらい悪いかを知りたいときに、かかりつけ医に電話で問い合わせることがよくあります。その際、診察券があれば、かかりつけ医の連絡先もスムーズに分かるのです。
救急車で搬送された患者さんが、普段の治療状況などうまく伝えられず、それを家族も十分に把握していない、というケースはしばしばあります。患者さんの体に起こった異変が、普段治療中の病気に関連するものなのかどうかを知ることは、私たちにとって極めて大切です。ところが、持ち物が不十分だと、それを知る術がないのです。
一方、いつも「通院セット」を用意していて、家族もそのことを把握していれば、そのセットをそのまま渡せば済みます。医療者はそこから必要な情報を引き出せるからです。
◇検査結果もあれば便利
過去に受けた血液検査や超音波検査などの結果を紙で手渡されたことがあれば、これもケースに入れておくと便利です。
特にご高齢の方の場合、さまざまな臓器が「加齢による変化」を起こしています。大きな病気にかかったことがなくても、若いころより心臓や腎臓の機能が悪くなっている、ということは往々にしてあります。
病院で検査を受けた際、過去の検査結果と比較することで、「普段から悪いのか、今回急に悪くなったのか」を私たちは把握できます。単一の検査結果だけでなく、複数回の傾向、推移を見ることも大切なのです。
病院を受診する機会の多い方や、そのご家族の方は、ぜひこうした「通院セット」を用意してみてください。きっと受診が楽になるはずです。(了)
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