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脳梗塞は、血の塊(血栓)が脳の血管に詰まり、血流が悪化することで脳細胞が死んでしまい、さまざまな障害が引き起こされる病気だ。高齢者の場合、原因の多くは生活習慣病による動脈硬化だが、若い世代では異なるケースが多い。若年性脳梗塞の特徴と注意点について、杏林大学医学部付属病院脳卒中センター(東京都三鷹市)の平野照之教授に聞いた。
若い世代の脳梗塞は、高齢者とは異なる原因によるものが多い
▽事故や運動も原因に
若い世代の脳梗塞は、脳動脈解離や心臓の異常が原因となることが多い。国内の調査研究では、生活習慣病による動脈硬化を原因とする脳卒中が増えるのは50歳以降と報告されているものが多い。
脳動脈解離は、交通事故などの外的な要因のほか、スポーツによる首の回転などでも起こり得る。心臓に由来する脳梗塞は、不整脈によるものが多い高齢者とは異なり、若年者では心臓の右心房と左心房の間に穴が開く卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)から生じることが多い。平野教授は「卵円孔開存は成人の約2割に見られます。通常は問題ありませんが、静脈に血栓があるとくしゃみなどで心房に圧力がかかり、動脈に血栓が流れ込んで脳梗塞を起こすことがあります」と説明する。
このほかに、頻度は低いがもやもや病、経口避妊薬の服用、片頭痛や膠原(こうげん)病の持病なども原因となる。
▽新型コロナの予防も
若年性脳梗塞の症状は高齢者の脳梗塞と同様で、障害された脳とは反対側の半身にまひや感覚障害などが出る。平野教授によると、脳梗塞は通常痛みはないが、脳動脈解離は神経が通っている血管に傷が入るため、激しい頭痛を訴える人が多いという。
若年性脳梗塞の治療は血栓を溶かす薬の点滴投与が原則で、カテーテルという細い管で血栓を取り除く処置などを行うケースもある。その後は脳へのダメージによる後遺症の状況に応じて社会復帰に向けたリハビリテーションを行うが、「若年者は体力があり、回復が早い人が多い印象です」と平野教授。
生活習慣病に起因しない若年性脳梗塞の予防は難しい。しかし、食生活や喫煙、飲酒などはリスクをさらに高めることになるため、予防、再発予防ともに生活習慣の見直しは重要なポイントとなる。
平野教授は「米国では新型コロナウイルス感染症により、若年者の重症脳梗塞が増えたという報告があります。国内では現時点で報告はありませんが、生活習慣病のリスクがない若い人でも血栓ができやすいと言われていますので、感染予防に努めてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/18 05:00)
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