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マイコプラズマ肺炎は年間を通して見られる病気で、比較的症状が軽く、かかっても動き回れることから「歩く肺炎」と呼ばれている。そのため集団感染や大流行を招いたりする。杏林大学医学部付属病院(東京都三鷹市)呼吸器内科の皿谷健准教授は、「マイコプラズマ肺炎は風邪に症状が似ていますが、市販の風邪薬では良くなりません」と話す。
熱が下がった後も頑固なせきが長引くのが特徴
▽飛沫で感染
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌が感染して発症し、肺炎全体の約20%を占める。5~40歳くらいに多く、しばしば幼稚園や小学校などで集団感染を起こしたり、家庭内で感染したりする。「潜伏期間は2~3週間と長く、鼻水や喉の痛みに加え、38度台の熱と乾いたせきが出ます。熱が下がっても頑固なせきが何週間も続きます」と皿谷准教授。
主な感染経路は飛沫(ひまつ)で、患者のくしゃみやせきで空気中に飛び出したマイコプラズマを吸い込んで感染する。風邪のような症状で自然に治ることが多いが、10%程度が肺炎に進行するという。皿谷准教授は「感染したマイコプラズマが気道の上皮に付着すると、トキシンなどの毒素や、過酸化水素といった、せきなどの気道障害を起こす物質を出します。排除しようとする患者側の免疫反応が強く働くと、症状が重くなります」と説明する。
▽解熱後の菌排出に注意
マイコプラズマ肺炎は、肺に雑音が出にくく、高熱でも脈が速くなりにくい。聴診でこれらを確認した後、年齢やもともと持っている病気の有無、症状、白血球数などを確認し、簡易検査キットを使って感染の有無を調べる。重症で入院が必要な場合は、細菌の遺伝子を増幅させて調べるPCR法やLAMP法を用いることもある。
治療には抗菌薬が使われる。タンパク質の合成を阻害して細菌の増殖を抑えるタイプが選択されるが、近年、最初に選択されることの多いマクロライド系という抗菌薬が効きにくい耐性菌が増加している。「2日たっても症状が改善しない場合は耐性菌と判断し、テトラサイクリン系やキノロン系など他のタイプに変更します」と皿谷准教授。幼稚園や学校は熱が下がれば登園・登校可能だが、せきやたんからはマイコプラズマの排出が続くので注意が必要だ。
「マイコプラズマは、肺以外にも皮膚症状や髄膜炎、中耳炎、肝炎、溶血性貧血、心筋症など、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。予防には、小まめな手洗い、マスクの着用を含むせきエチケットを徹底してください」と皿谷准教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/23 05:00)
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