特集

死につながる高齢者の肺炎
ワクチン接種で予防を―日本臨床内科医会

 がん、心疾患とともに日本人の死亡原因の上位にあるのが、肺炎だ。特に、死亡者の96%が65歳以上の高齢者であることが問題視されている。肺炎を起こす最も多い病原菌は「肺炎球菌」。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班担当常任理事の坂東琢麿氏は、同会所属医師の肺炎球菌ワクチンに対する認識の高まりを背景にワクチン接種を強く推奨している。

高齢者は肺炎の予防が大事

高齢者は肺炎の予防が大事

 インフルワクチンと併用

 高齢者がインフルエンザにかかると、肺炎を併発する恐れがある。肺炎球菌ワクチンインフルエンザのワクチンを併用すべきだろうか。

 日本臨床内科医会が会員を対象に行ったアンケートでは、「両者の併用を積極的に推奨する」と考える会員が56%と半数を超えた。「インフルエンザワクチンは推奨、肺球菌ワクチンは希望者のみ」は18%、「両ワクチンとも希望者のみに接種」は25%だった。

 ◇同日の接種でも問題なし

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの接種

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの接種

 インフルエンザ肺炎球菌の同時接種についてはどうだろうか。坂東氏は「両方のワクチンを同じ日から2週間以内に接種するのが同時接種だ」と説明する。アンケートでは、「積極的に推奨する」が22%、「希望者のみに同時接種する」34%、「同時接種はしていない」43%だった。

 坂東氏は「同じ日に両方のワクチンを接種しても、副作用などの問題はない。それをためらう受診者もいるだろうが、医師側が丁寧に説明すればよい」と話す。同日接種であれば受診する側の負担も少なく、ワクチン接種率は高まるとみられる。

 ◇高い二つの肺炎球菌ワクチン認知度

 今回のアンケートで坂東氏が注目したのが、二つの肺炎球菌ワクチンについてその効果などを知っているかという質問への回答だった。

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種

 二つのワクチンは、「ニューモバックスNP」と「プレベナー13」。ともに、人の抗体をつくる「B細胞」の機能に関わる。後発のプレベナー13はB細胞だけでなく、がん細胞への攻撃などを担う「T細胞」にも作用し、免疫の効果が長期間持続する。

 回答を見ると、「2種類について作用機序(薬が作用する仕組み)や臨床試験成績の違いを知っている」が57%でトップだった。次いで「ニューモバックスは知っているが、プレベナーについてはあまり知らない」32%、「両方についてあまり知らない」11%となっている。

 坂東氏は「57%の臨床内科医たちが、二つのワクチンの作用機序などを知っている。この数字は予想より高く、少し驚いた」と評価した上で、「今後、内科医の認知度はさらに高まるだろう」と語る。

2種類の肺炎球菌ワクチン

2種類の肺炎球菌ワクチン

 ◇健康寿命を延ばす

 ニューモバックスは65歳からの定期接種が認められているが、公費による補助は1回だけ。プレベナーは任意接種で自己負担が生じる。ニューモバックスの接種率は約40%、プレベナーの接種率は約2%にとどまる。

 アンケートの自由回答では、ニューモバックスの2回目以降の接種やプレベナーの定期接種化を望む声が目立った。坂東氏は「ワクチンによる肺炎の予防は高齢者の死亡率を下げるとともに、生活の質(QOL)を保ち、健康寿命を延ばすという重要な意味がある。ワクチンの普及に向けて広報活動をさらに強化したい」と強調した。(鈴木豊)


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