治療・予防

薬剤が原因となるアレルギー
重篤化する例も、市販薬にも注意(帝京大学ちば総合医療センター第三内科 山口正雄教授)

 本来は病気の治療のために用いる薬剤は、人の体には異物であるため、体を防御するはずの免疫機能が過剰に反応して「薬物アレルギー」が起こることがある。原因となりやすい薬剤や対処法について、帝京大学ちば総合医療センター(千葉県市原市)第三内科の山口正雄教授に聞いた。

薬を飲み始めてからこんな症状が表れたら要注意

 ▽死に至る例も

 アレルギーは花粉やダニ物質などの異物が体に入った時に、体を守る免疫反応が強く起こり、症状が表れる病気だ。薬剤によってもまれに生じる。

 薬物アレルギーの症状や程度は多様で、多く見られるのが発疹(薬疹)や皮膚のかゆみだ。薬の中止で症状は改善することが多いものの、中には重篤化して命に危険が及ぶことがある。

 高熱とともに、全身の皮膚と粘膜が赤く腫れ上がり、熱感と痛みを伴う発疹や水膨れが生じるスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と、その重症型である中毒性表皮壊死(えし)症(TEN)は、典型的な重症薬疹として扱われる。これらは薬剤と無関係で発症することもある。SJSは皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれ、目の症状が強いと後遺症で視力障害や失明に至る例もある。TENの死亡率は20~30%にも上る。

 一方、薬物性過敏症症候群は抗けいれん薬などが原因となって発症するもので、発熱かゆみを伴う紅斑、リンパ節の腫れが起こる。抗菌薬などが主な原因となる急性汎発性発疹性膿疱(のうほう)症は、高熱、浮腫性の紅斑の上に白いうみを持つ発疹が多発する。

 ▽市販薬でもアレルギー

 薬物アレルギーを起こしやすいのは、病院で処方される抗菌薬、解熱鎮痛剤、抗けいれん剤など。薬のアレルギーには、麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤などを注射してすぐに血圧低下や意識障害などの症状が表れるアナフィラキシーショックもあるが、薬疹の場合、薬を飲み始めて数時間から数日後に起こることが多く、長期服用していた薬でも突然発症する可能性がある。確実な予防法はなく、一度でも服用後に薬疹などの症状が表れた薬は飲まないことが大切だ。

 市販の解熱鎮痛剤や漢方薬などでも生じ得る。「薬物アレルギーだと思い込んでいても、実はアレルギー以外の副作用や別の病気の可能性もあります。薬疹を疑う場合は、皮膚科にお薬手帳を持参して、いつから、どのような症状があったか、薬の名前や服用時期も併せて伝えましょう」と山口教授。皮膚の症状が広がって発熱や倦怠(けんたい)感があり、悪化する場合には、早急に近隣の皮膚科を受診することが重要だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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