天然ゴムで皮膚障害に―ラテックスアレルギー
命に関わることも(山梨大学医学部付属病院皮膚科 三井広講師)
ゴム手袋などの天然ゴム製品に触れることで皮膚にかゆみや赤み、じんましんなどが生じるラテックスアレルギー。まれにアナフィラキシーショック(血圧低下や意識障害など)を引き起こし、命に関わることもあるため軽視できない。ラテックスアレルギーに詳しい山梨大学医学部付属病院(山梨県中央市)皮膚科の三井広講師に話を聞いた。
ゴム手袋やゴム風船、ばんそうこうなどで症状が出現
▽15~30分で発症
ラテックスアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)は、天然ゴムの成分であるラテックスに含まれるタンパク質。皮膚にラテックスタンパク質が触れると、通常は15~30分くらいで症状が表れる。手術など医療用手袋を扱う医療者には知られているが、一般での認知度は高くない。三井講師は「日本国内の医療者ではラテックスアレルギーの人の割合が1~4%と報告されています。一般の人でのデータはないものの、海外では1%程度とされていることから、日本でも同程度と思われます」と話す。
発症する確率は低いといっても、高リスクの人はいる。「製造業などでゴム製品を日常的に扱う人、アトピー性皮膚炎があり肌荒れを起こしやすい人は、ラテックスアレルギーになりやすいです。頻繁に医療機関で検査や手術を受けている人も、医療用手袋などが体に触れる機会が多いため症状が出る場合があります」
▽バナナや栗で重症化も
ゴム手袋の他には、ゴム風船をくわえて唇が腫れ上がったり、男性用避妊具を使用して陰部などにかゆみや赤みが出たりするほか、ばんそうこうで発症する場合もある。さらに、バナナや栗、アボカドなどを食した際、口の中にかゆみが出たり、じんましんやアナフィラキシーショックといった重い症状が出たりすることがある。重症の場合は、ラテックスタンパク質と似た成分がこれらの食べ物に含まれるために生じるラテックス・フルーツ症候群が疑われる。
血液検査と問診で診断されるが、医療機関によっては、少量のアレルゲンを針で皮膚に刺してアレルギー反応を確認する「プリックテスト」を行うこともある。「治療は抗ヒスタミン薬の内服が中心です。もちろん、天然ゴム製品を避けることも必須です。最近は天然ゴムを使用しないラテックスフリーの製品もあります」と三井講師。重症な患者には、エピペンというアナフィラキシーを緩和する自己注射剤を処方することもあるという。
「天然ゴム製品を使用して少しでも気になる症状があれば、まずは皮膚科やアレルギー科を受診して検査を受けてほしい」と三井講師は呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/03/05 05:00)
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