話題 2024/12/19 05:00
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新型コロナウイルスの感染が一向に収まらない。予防の切り札とされるワクチンをめぐって風評が飛び交い、接種を控える人たちもいる。しかし、専門家は「ワクチンが将来、遺伝子を変異させたり、がんを誘発したりすることはない」とした上で「感染から身を守るために正しい知識を持ってほしい」と、強く訴えている。
米ファイザー製の新型コロナウイルスのワクチン=AFP時事
「言ってみれば、ワクチンはウイルス感染のまねをして体に感染を覚え込ませる。すると、免疫ができて、実際にウイルスが感染しようとしたときに体が反応できる」
東京大学医科学研究所の石井健教授(感染・免疫部門ワクチン科学分野)はワクチンの仕組みについて分かりやすく説明する。
ワクチンの副反応は接種部位が腫れたり、痛くなったり、赤くなったりすることだ。また、発熱することもある。はしかワクチンの場合は、発疹などがある。副反応は厚労省による造語。副作用や有害事象では聞こえが悪い。それにワクチンは薬ではないというのが理由のようだ。
◇社会全体にメリット
ワクチン接種はなぜ必要なのか。石井教授は「メリットは本当の感染から守る。デメリットは健康な人でも腫れたり、痛くなったりする副反応があることだ。社会全体のメリット、デメリットもある。メリットは感染症にかからない、あるいは感染症に強い人をつくり、集団免疫を誘導できることだ。社会全体として感染を抑え、弱い人を守る。デメリットはワクチン接種をしない集団がウイルスに感染してしまうことだ」と言う。
東京大学医科学研究所の石井健教授
◇本末転倒、不毛な議論
メッセンジャー(m)RNAを体内に入れることで遺伝子が変異すると懸念する向きもある。「証明された事実はなく、根拠がない。mRNAは、その情報に基づいてタンパク質が合成されるだけで、後は消えてしまう。また、DNAワクチンに限っては安全性が確認できている。
mRNAを使ったワクチンの実用化は初めてのケースだ。想定外の副反応があるどうかは数年間、経過を見ないと分からないという慎重論もある。石井教授は「想定外の副反応がワクチンによるものか、そうではないのか。確定するのは何十年もかかる。副反応のリスクだけを見て、感染リスクを高めることになれば本末転倒だ」とし、「全てのリスクがゼロでなければ駄目なのか。現在の感染状況を考えると、そういう議論は不毛だ」と話す。
新型コロナウイルスのワクチン接種の風景
◇「デマ」に注意
「将来がんを発症する可能性がある」
「不妊症になるかもしれない」
SNS上などでは、ワクチン接種についてさまざまなうわさが取り沙汰されている。
石井教授は「いわば『デマ』のレベルであって、そういうことは一切ない」と否定した上で、「デマが飛び交っているのは私たち医療サイド、それにメディアの責任でもある」と付け加える。
「うそ」、「まやかし」、「毒が入っている」―。天然痘の撲滅への道を開いた「近代免疫学の父」ジェンナーの種痘も、すぐに社会に受け入れられたわけではない。初めての試みだったことに加えて社会的格差や宗教なども絡み、散々たたかれたものだ。普及するのに100年かかったという。
米モデルナ製の新型コロナウイルスのワクチン=AFP時事
◇毎年接種の必要はない
インフルエンザを予防するためには年に1回、ワクチンを接種する必要がある。新型コロナウイルスのワクチンではどうか。「恐らく3回目の接種はあり得るだろう。しかし、毎年接種する必要があるとは考えていない」。これまで、はしかと風疹を予防するための混合ワクチンなどが接種されてきた。新型コロナウイルスの場合はどうだろうか。石井教授は「混合ワクチンはあり得る。有効性があるワクチンとして早く世に出てほしい」と期待する。
米ファイザー製も米モデルナ製も、接種は2回必要だ。1回目がファイザー製なら2回目もファイザー製というように、同じ製造元のワクチンが推奨されている。ただ、石井教授は「状況次第で、1回目と2回目でワクチンの製造元が異なることはあり得るだろう。それでも、効果に影響を与えない」。その根拠として、1回目と2回目のワクチンは異なった方が効果があるという論文が発表されていることなどを指摘した。
◇国産ワクチンの開発急げ
新型コロナウイルスをめぐっては別の問題もある。政府の掛け声とは裏腹に供給に不安が生じている。「ワクチンがタダと思うのは大間違いだ。今回は米国や英国が大量に造り、高値だが、日本は運良く買うことができた。次にパンデミックが起きた時にワクチンを確保できる保証はない」
ワクチン開発につぎ込む資金は英米やロシア、中国に比べて大きく見劣りする。石井教授は「1周遅れで済めばよいが、2周も3周も遅れてしまう恐れもある。今が踏ん張りどころだ」と国産ワクチン開発の意義を強調している。(了)
(2021/07/19 05:00)
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