2024/11/13 05:00
「おひとりさま」の効用~ポジティブな孤独
「子どもを作らない女性が年を取って税金で面倒を見なさいというのはおかしい」と問題発言した過去を持つ森喜朗元首相(2月12日撮影)
コロナ禍で実家に帰れないのはつらいけれど、実はほっとしているという女性がいることをご存知でしょうか。女性の社会進出が叫ばれて久しいのですが、総論は賛成でも、自分の娘や義理の娘に関してはそうはいかない、ということがしばしばです。結婚や出産について、周りからの言葉がストレスになっている女性は少なくありません。(文 海原純子)
ケース1 webデザイナーをしている30代女性。都内に住み、独立して仕事をしておりリモートワークが増える中、仕事も多く順調にキャリアを積み重ねています。コロナ禍の前は毎年暮れや夏休みに地方の実家に帰ると、まだ結婚しないのか、と両親や祖父母に言われるのが、かなり苦痛だったといいます。都内で仕事しているときは全くそんな気持ちにならないけれど、実家に帰ると、自分が何か親の希望をかなえていない親不孝をしているような気分になり、憂鬱(ゆううつ)になったそうです。もう2年近く帰省していないので寂しい気持ちはするけれど、逆にほっとする気分になっているといいます。
ケース2 大学の研究室勤務の30代女性。数年前結婚して二人暮らしです。二人の実家は地方で、コロナ禍以来帰省はしていません。出産については、二人ともまだしばらく自分たちのキャリアを伸ばしたいという気持ちでいますが、夫の両親は、「高齢出産は危険、周りの人たちが孫の話をするのに、自分たちは話に入れない」などとしばしば口にするので、罪悪感を感じてしまうのです。仕事をしているときにはのびのびとしている自分が、夫の両親のことを考えると「自分は義務を果たしていない」気分に追い込まれるのを感じています。コロナ禍で帰省していないから気分的に楽、と言うのです。
◇「結婚・出産をしないと女性として一人前といえない」という意識
女性の生き方の選択肢は広がったとはいえ、独身でキャリアを積んでいる女性や、結婚しても出産していない女性には生きにくいことがあるのが現実です。
お二人のケースは、実家の両親や義理の両親との関係の中でのストレスですが、職場の中には、いまだに女性は結婚して子どもを産むことが義務で、それをしていない女性は一人前でないという意識を持つ男性もいて、そうした男性が上司だと居心地が悪くストレスになることがあるのです。職場の中では、こうした居心地の悪さをなくすために、相談したり話し合える場をつくったりすることも必要でしょう。
女性同士が話し合えるネットワークの構築も大事です。
また、女性は家事育児をするのが当然であり、それをしないで、夫に家事育児を分担させるようなことはよくない、と考えている人も少なくありません。
表立ってこうした意見を言う人は、さすがに少なくはなっています。でも、こうした意識はゴーストのようにはびこっています。総論としては、女性も男性も男女共同参画という一方で、各論的には、「やはりうちの娘は、うちの嫁は」となるケースがかなりあるのです。
男女共同参画のシンボルマーク。今春12年ぶりに新しくなったのだが…【内閣府提供】
◇親の考え方に影響されてしまう男性
「男性は外、女性は内」という役割分担的な考え方についての賛否を、現役世代の男女の医師を対象にアンケート調査を実施しました。「あなたの育った家庭では、両親はこうした考えに賛成でしたか、反対でしたか」という質問も盛り込みました。
「男性は外、女性は内」という男女役割分担には、反対の人がほとんどで男女の有意差がありませんでした。興味深かったのは、女性医師が育った家庭では、両親は役割分担に反対のことが多い一方、男性医師が育った家庭では、役割分担に賛成の方が多いのです。
この調査は女性医師のキャリア継続の困難さを調査するために実施しましたが、現役世代と両親の世代ではかなり考え方が違うことが明らかになりました。
夫も、妻も同じように「子どもはもう少し後でも」という意見でも、親から言われるとそちらを優先してしまう男性もいて、女性が悩むこともあります。「自分たちの家庭をどのように築き支え合うか」について、あらかじめ二人でよく話し合い、決めておくことがストレスを軽減するために必要といえます。
◇それはユーモアとは言えません
結婚や出産について軽口をいうことを、ユーモアととらえている男性もいまだにいるのは、驚くばかりです。「早くいい旦那さん、見つけなさいよ」「子どもはまだなの?」などを平気で口にする男性もいます。さらに、こうした発言について、NOと言うと、ユーモアが分からない女性という評価を下される現実もあります。結婚や出産についてはその人の人生の問題です。揶揄(やゆ)する風潮がいまだに続いていることも、女性のストレスになっています。
(2021/09/07 05:09)
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