教えて!けいゆう先生

ユーチューブ、それでも残る危険な広告
~薬機法違反など55万件を削除~ 外科医・山本 健人

 グーグルは10月5日、「ポリシー違反のユーチューブ広告に対する新しい取り組み」と題し、重要な報告を行いました。

 「薬機法違反」などの、ポリシーに違反するユーチューブ広告を大量に削除したというのです。その数は、2020年6月以降で55万件に上るといいます。

 ユーチューブでは、日本特有の事例に特化したシステムを改良し、機械学習と専門チームによるレビューによって、不適切な広告の検出精度を上げたのです。

グーグルの傘下にあるユーチューブの本社=2018年4月撮影、米カリフォルニア州サンブルーノ【AFP時事】

 「薬機法」とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」のことです。

 薬機法では、「誇大広告の禁止」や「特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限」などが定められています。

 医薬品や医薬部外品、化粧品や医療機器などの効果、性能に関する宣伝は、人の健康に直接影響を及ぼします。当然ながら、法律によって厳しく制限される必要があるのです。

 ◆ユーチューブの強い宣伝効果

 10~60代の男女500人を対象に行った意識調査では、商品購入につながったデジタル媒体として、最も多くの人が「ユーチューブ」と回答しています。その割合は30%に及びます編注)

 また、この傾向は、若い世代のみに見られるものではありません。10~20代の21%、30~40代の34%、50~60代でも21%は「ユーチューブ」と回答しているからです。

 近年は、医療・健康に関する疑問を、ユーチューブを使って解決したいと考える人が増えています。

 私は、自分で立ち上げたユーチューブのチャンネルに、医療に関する動画を40本ほど掲載しています。この動画に、ユーザーがどのようにしてたどり着いたかを調べてみると、興味深いデータが得られます。

 20年1月の段階では、ユーチューブでの検索で動画にたどり着く人の割合は19.8%でした。ところが、この割合は徐々に増加し、21年1月には48.6%、9月には69.9%に達しました。

 「医療に関する疑問を動画で解決しよう」と考えるユーザーが増えていることを示す、一つのデータと言えるかもしれません。

 ◆身を守れるのは私たち自身

 インターネットの世界では、膨大な数の広告が日々、出回っています。グーグルのようなプラットフォーマーが目を光らせても、不適切な広告を全て削除することはできません。

 グーグルは「悪意ある第三者は、使用停止を避けようとして頻繁に行為を変える」「グーグルのシステムが100%効果的というわけではありません」とし、その対応の難しさについて言及しています。

 不適切な広告を信用し、効果の明らかでない商品に高いお金を払い、その上、健康被害を受けたり、病院への受診が遅れたりする人は多くいます。

 私たちの身を守れるのは、私たち自身です。

 学会や公的機関などが推奨しない商品や、科学的根拠の明らかでない怪しげな商品には、くれぐれも気をつけていただきたいと思います。

 (編注宣伝会議 2020年2月号

(了)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医、ICD(感染管理医師)など。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者が教える正しい病院のかかり方」(幻冬舎)、「すばらしい人体 あなたの体をめぐる知的冒険」(ダイヤモンド社)など多数。

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