教えて!けいゆう先生
スマホで医療情報を管理する!
賢い受診のためのコツ(外科医・山本健人)
近年はスマホを使う人が非常に多く、高齢者でもスマホを使いこなす方が増えています。しかし、医療に関するツールとなると、便利なものでも意外に知られていません。
ここでは、お勧めできる便利なツールをいくつか紹介しましょう。
スマホの医療ツールを活用して、いざという時に備えよう
◇緊急時に必要な医療情報を登録する
スマホには、持病やアレルギー、使用中の薬、身長や体重、生年月日などの情報を登録しておくことができます。iPhone(アイフォーン)では「メディカルID」、アンドロイドでは「緊急情報」と呼ばれる機能です。
「メディカルID」は、「ヘルスケア」というアプリを使って登録できます。「緊急情報」は、アプリではなく「設定」からアカウント情報として登録できます。
これらは、万が一のときに他人がロックを解除しなくても見ることができます。自分が突然倒れて意識を失ったり話せなくなったりしたときに、応急処置に当たってくれた人が閲覧できるのです。
ちなみに、緊急通報(110番や119番)も、ロックをかけたまま行うことができます。iPhoneの場合は、サイドボタンと音量ボタンを同時に長押しするか、サイドボタンまたは上部のボタンを素早く5回押すことで、緊急通報が可能な画面に切り替わります。一方、アンドロイドの場合は、ロック画面の隅に緊急通報ボタンが表示されています(機種によって異なるため、公式サイトで確認が必要)。
誰もがいつ大きな事故にあったり病気に見舞われたりするか分かりません。こうしたスマホツールを使って身の安全を守ることは大切です。
◇救急受診の前に使えるアプリ
救急車を呼ぶべきか悩んだときは、「Q助」というアプリが便利に使えます。消防庁が作成したアプリで、症状に関する質問にタップで答えていくと、緊急度に合わせて必要な対応を教えてくれます。
表示されるのは、
「今すぐ救急車を呼びましょう」
「できるだけ早めに医療機関を受診しましょう」
「緊急ではありませんが医療機関を受診しましょう」
「引き続き、注意して様子をみてください」
のいずれかです。
迷ったときに行動指針を示してくれる、とても頼りになるアプリです。
また、子どもの症状で困ったときは、佐久医療センター小児科が中心となって行っている「教えてドクター!プロジェクト」が作ったスマホアプリ「教えて!ドクター」がお勧めです。
症状や病名から手軽に情報検索できるほか、子どもの防災に関するまとまった情報も閲覧できます。また「予防接種スケジューラー」として、子どもの生年月日を入力すると接種が必要な日付が表示される、便利な機能も搭載されています。
小さなお子様がいらっしゃる家庭にとって、こうしたアプリがあるととても安心でしょう。
もちろん、いずれのアプリも無料で使えます。ぜひ、スマホにダウンロードしておき、いざというときに備えておくことをお勧めします。(了)
著者(山本健人氏)プロフィル
著者プロフィル
2010年、京都大学医学部卒業。複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程、消化管外科。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設2年で800万PV超を記録。全国各地でボランティア講演なども精力的に行っている。
外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医など。著書に『医者が教える正しい病院のかかり方(幻冬舎)』など多数。当サイト連載『教えて!けいゆう先生』をもとに大幅加筆・再編集した新著『患者の心得ー高齢者とその家族が病院に行く前に知っておくこと(時事通信社)』は2020年10月下旬発売。
病気や症状に関する情報をインターネットで調べる人がますます増えています。しかし、ネット上の医療情報は間違いだらけです。間違った情報を信じ、適切な治療を受けられず、病状を悪化させてしまう人はたくさんいます。
私はこれまで、間違った情報にだまされ、医学的根拠の乏しい治療に傾倒し、目の前から去って行った多くの患者さんたちを見てきました。私が日々の診療で痛感するのは、「診察室の中だけでは彼らを助けることはできない」ということです。さまざまなテレビ番組、書籍、そして何よりインターネット。患者さんたちは、病院の外で膨大な量の間違った医療情報に暴露されているからです。
私たち医師は、病院に来ない人を助けることはできません。しかしインターネットを使って正しい医療情報を多くの人に届けることができれば、状況は変わるかもしれない。
時事メディカルは、医学的根拠に基づいた、正しく信頼性の高い情報を日々みなさんに提供しています。私は一介の医師の立場から、皆さんのお役に立てる情報を届けることで、その一翼を担いたいと考えています。(山本健人)
医師と患者の間には医学知識の格差があります。しかし、この格差は、患者が理解することが難しい専門的知識だけではありません。簡単な言葉で伝えれば、比較的容易に理解できる知識も多いのです。
特に高齢者はこの格差が大きい傾向にあり、「知らない」ためにせっかくの医療が十分に活用できないケースも見受けられます。高齢者が医療機関に通院・入院する際は、家族の協力も欠かせません。そこで、本書は高齢者の病気に対する考え方や、高齢者特有の問題にスポットを当てながら、高齢者とその家族のための知識を紹介しています。
【関連記事】
授業中のトイレは恥ずかしい? 便意を我慢してはいけない理由(外科医・山本健人)
病気になった方への助言 本人を苦しめることも(外科医・山本健人)
意外に身近なアニサキス どうやって予防する?(外科医・山本健人)
ストロング系チューハイに注意 飲みやすさの先にある危険(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 松本俊彦部長)
(2020/11/18 05:00)