治療・予防 2024/12/23 05:00
薬物療法が大きく進歩
~ぼうこうなどの尿路上皮がん(虎の門病院 三浦裕司部長)~
新型コロナウイルスのワクチン接種が進む中、冬を控えてインフルエンザワクチン接種の時期を迎えた。昨年から今年にかけての患者数が国内外ともに激減したこともあって、一部の医療関係者にはインフルエンザワクチンの接種を積極的に勧めない向きもある。しかし、日本感染症学会の「インフルエンザ委員会」は、高齢者や乳幼児、重症化する恐れのある持病のある人などを中心に、今シーズンも積極的な接種を推奨するとの見解を示している。
インフルエンザワクチンの接種を受ける男性
推奨の理由として同委員会は、オーストラリアなど南半球諸国では前シーズン同様に感染が低調なものの、インドなどアジア亜熱帯諸国の一部でインフルエンザの流行が継続していることに注目している。毎年、南半球の流行は北半球の参考となるためだ。また、英国政府が今シーズンの流行が早期に始まり、患者数も例年の1.5倍になると予想していることから、日本でも警戒が必要だとしている。
さらに、今後も新型コロナの新たな感染拡大が危惧されるため、症状が似ているインフルエンザの診療が医療機関への大きな負荷となる可能性があることなども接種推奨の理由に挙げている。
◇コロナとの同時流行を警戒
同委員会メンバーの神奈川県警友会けいゆう病院の菅谷憲夫医師(小児科)は、「昨シーズン、世界的にインフルエンザはほとんど流行しなかった。その原因は、新型コロナ対策として世界各国が入出国管理を厳しくし、国民にはマスクの着用、手指の消毒などの徹底を図ったことが、結果的にインフルエンザ対策としても極めて有効だったのだろう」と指摘する。
菅谷憲夫医師
菅谷医師が警戒を強めているのは、インドやバングラデシュなどの南アジア諸国。これらの国から、今夏に流行したインフルエンザウイルスが日本国内に持ち込まれる危険性がある。「新型コロナ感染が一段落すれば、海外からの人流はいずれ回復する。今、インフルエンザが流行している国々から日本に持ち込まれ、流行する可能性が高い」と話す。
実際、例年であれば冬場に小児で流行するRSウイルス感染症が、インフルエンザ同様、昨シーズンほとんど流行しなかった。しかし、その反動のように今年の5月から7月にかけて各地で大流行した。おそらく、海外から持ち込まれたのだろう」と菅谷医師は指摘している。
「もし平年通りにインフルエンザが日本国内で流行すれば、1シーズンで600万人から1千万人以上が感染するだろう。そうなると、現在の発熱外来の窓口では対応しきれなくなるのは確実だ。コロナ対策を成り立たせるためにも、できる対策はしておくべきだ」と、インフルエンザのワクチン接種の必要性を強調する。
峯眞人医師
◇ワクチン供給量は平年並み
「インフルエンザワクチンの供給量は、予防接種が積極的に勧められた2020~21シーズンの70~80%程度とみられるが、平年とほぼ同量だ。ただ、供給の開始は少し遅れ、12月中旬までに順次、医療機関に届くとされている。例年よりも接種時期は少し後ろにずれ込んでいくだろう」
日本小児科医会理事でさいたま市内に小児科クリニックを開業している峯眞人医師は、10月に開かれたセミナーで今シーズンのワクチン供給事情をこう説明。「インフルエンザの流行が極めて低調だった昨シーズンに感染しなかった人は、感染すると重症化する恐れがある。昨年はほとんど見られなかったRSウイルスによる呼吸器感染症についても、警戒は欠かせない」と強調する。
峯医師は、新型コロナのワクチン接種が終わっている高齢者に対し、早めのインフルエンザワクチン接種を勧める。その上で「新型コロナワクチンを未接種の一般成人は、新型コロナの方を優先し、2回目の接種終了後14日以降にインフルエンザの接種を受けてほしい」と述べるとともに、「新型コロナワクチンの対象外の12歳未満の小児については、早めに原則として2回、インフルエンザの接種を受けてほしい」と呼び掛けた。(了)
(2021/11/02 05:00)
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