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国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)健診部の小久保喜弘特任部長と李嘉琦研究員らは、眼底の網膜に高血圧が原因の異常が表れると、脳卒中、心筋梗塞などの循環器病を発症するリスクが高くなると、日本動脈硬化学会誌に発表した。
軽度の高血圧性網膜症と循環器病発症リスクの関係
▽血管を直接観察できる眼底検査
眼球の一番奥にある眼底には眼球の内壁を覆う網膜があり、ここで物の形、色、明暗を感知している。網膜には血管が張り巡らされ、酸素や栄養を送っている。血管は、眼底カメラや眼底鏡による検査で見ることができる。眼底は、体内の血管を直接観察できる唯一の場所である。
網膜の血管は他の血管と同じく、高血圧や糖尿病があると傷つきやすい。血管の障害が進むと、網膜に出血やむくみが生じ、視力低下や視野異常といった症状が表れる。こうした網膜の異常が高血圧によって起こることを「高血圧性網膜症」と呼ぶ。
この病気になると全身の血管も高血圧で傷つき、循環器病が起こりやすくなっている可能性がある。これまでの研究でも、軽度の高血圧性網膜症の人は循環器による死亡リスクが高いと報告されている。
▽循環器病リスクが24%増
小久保特任部長らは吹田市の住民を対象にしたデータを用い、軽度の高血圧性網膜症と循環器病発症との関係を分析した。対象は、30~79歳で循環器病にかかったことがない7027人。
循環器病は、平均17年間の追跡期間中に598人(脳卒中351人、心筋梗塞などの虚血性心疾患247人)で認められた。研究開始時に眼底検査の結果が正常だった5601人と、軽度の高血圧性網膜症があった1426人に分けて循環器病の発症リスクを検討した結果、軽度高血圧性網膜症の人では正常な人に比べ、循環器病全体(脳卒中と虚血性心疾患)の発症リスクが24%増えた。脳卒中では28%、虚血性心疾患では19%増加した。
健診での眼底検査は現在、医師が必要と判断した場合に行われている。李研究員は「眼底検査で、軽度でも高血圧性網膜症が認められたら、高血圧症の治療を受け、生活習慣にも気を付けてください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/07/17 05:00)
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