新米医師こーたの駆け出しクリニック

命に関わる水、本当に必要なのは1日に何リットル? 専攻医・渡邉 昂汰

 皆さんは1日に水分をどれだけ取っていますか?

 「夏場は気をつけていたけど、最近は寒いからあまり飲まなくなった」という話をよく聞きます。

 厚生労働省の指針では、1日に必要な水分は2.5リットルとされています。このうち、体内の代謝で産生される分が0.3リットル、食事中の水分が1.0リットルあるので、飲み物としては毎日1.2リットル取る必要があります。

厚生労働省の指針はあくまで目安です。その日の体調、飲んでいる薬、抱えている疾患などによって異なることもありますので、一度、主治医に相談してみましょう【時事通信社】

 急激な脱水は命の危機に直結しますが、慢性的な脱水も脳梗塞尿路結石など、さまざまな健康問題を引き起こします。
 
 熱中症だけでない怖さ

 脱水といえば熱中症のイメージですが、快適な温度下でも、吐き気食事が取れなかったり、嘔吐(おうと)や下痢で水分を失ったりして脱水状態になることも多々あります。

 私の患者さんにも、腸炎による嘔吐下痢で著明な脱水となり、入院した人がいました。脱水で体内を巡る血液が減少し、腎臓に血液が届かなくなると、腎臓の働きがストップしてしまいます。

 この人は、点滴で水分を補給することで、幸いにも腎機能は元に戻り、無事に退院することができました。しかし、同じような経過でも腎臓が復活しなければ、透析が必要になることもあります。
 
 ◇薬と脱水の関係

 1.2リットルというのはあくまで目安で、内服薬やその日の体調によって、取るべき水分量調整が必要です。

 例えば、尿から糖分を捨てる薬を飲んでいる人は、さらにたくさん水分を取る必要があります。糖分に引っ張られて水分も過剰に排泄されてしまうため、尿量が増えて脱水になりやすくなるからです。

 アルコールや多量のカフェインを含む飲料にも、要注意です。一見、水分を摂取したように見えますが、これらの成分には利尿効果があり、飲んだ分以上に尿が出てしまいます。

 ただ、たくさん飲めばいいということでもなく、心臓や腎臓にもともと疾患のある人は、水分制限を課されている場合もあります。自分がどんな水分を、どのくらい飲めばいいのか、一度、主治医に相談してみましょう。

(了)

 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

【関連記事】

新米医師こーたの駆け出しクリニック