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特定の食物を摂取して数時間後に腹痛や下痢などの症状が表れる、食物たんぱく誘発性胃腸炎。小児の病気だと思われていたが、近年、成人も罹患(りかん)することが分かってきた。食物アレルギーの一種だが、一般的なそれとは症状が異なるため気付きにくく、アレルギーの有無を調べる血液検査でも陰性となる場合が多いため、診断も難しいという。草加市立病院(埼玉県)消化器内科の渡辺翔副部長に成人での特徴について聞いた。
食物たんぱく誘発性胃腸炎を疑うポイント
◇腹部に張り
渡辺副部長によると、原因となる食物を食べた直後から皮膚の発疹や呼吸器症状などの症状が表れる一般的な食物アレルギーと異なり、食物たんぱく誘発性胃腸炎は、早くても1時間たった頃から腹部の張り、激しい腹痛、吐き気や下痢など消化器症状が表れる。乳児ではミルクが原因となって嘔吐(おうと)を繰り返すという特徴があるが、成人では嘔吐を起こさない例も多い。
日本で食物たんぱく誘発性胃腸炎が小児の疾患と認識されるようになったのは1990年代後半で、国際診療ガイドラインができた2017年ごろから報告が急増している。一方、海外では魚介類を中心に成人の患者が報告されるようになった。
渡辺副部長らが同院で魚介類アレルギーと診断された成人患者117人を詳しく調べた結果、22人が食物たんぱく誘発性胃腸炎だった。原因となる魚介類は貝類が約45%を占め、特にカキが多く、加熱や加工を施されたものでも症状が表れた。
「消化管に特定の食物たんぱくに反応する免疫細胞が存在し、原因となる食物を摂取するとアレルギー反応が起きると考えられます。魚介類以外の食物が原因となっている方もいます。今のところ、原因となる食物を避ける他に有効な対処法はありませんが、発作時に有用な薬は海外より報告されています」
◇アレルギー検査は陰性
この疾患は内科医の間でもほとんど認知されておらず、アレルギー検査でほとんどが陰性になるため、食物アレルギーと診断されにくく、急性胃腸炎などとして扱われるケースが多いという。
食物たんぱく誘発性胃腸炎を疑うポイントに、〔1〕原因食物を食べた後、腹部症状のみ誘発される〔2〕食後1~6時間後から症状が出る〔3〕原因食物を避けると症状は完全に消失する〔4〕原因食物を食べ2回以上発作を経験している〔5〕以前は原因食物を食べても無症状だった―を挙げる。
「当院では専門外来を設立していますが、気になる症状があれば、アレルギー科や消化器内科を受診し、特定の食物を食べた時に腹部の症状が出ることや経過などをよく伝える点が大切です」と渡辺副部長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/08/01 05:00)
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