治療・予防

診断されにくい急性ポルフィリン症
~激しい腹痛、嘔吐など(済生会江津総合病院 堀江裕名誉院長)~

 激しい腹痛、嘔吐(おうと)、体の痛みなど多岐にわたる症状が起こる遺伝性の病気「急性ポルフィリン症」。指定難病の一つで、診断を付けにくく、長期間苦しむ患者が多い。この病気に詳しい済生会江津総合病院(島根県江津市)名誉院長の堀江裕医師に聞いた。

急性ポルフィリン症の症状

急性ポルフィリン症の症状

 ◇多岐にわたる症状

 ポルフィリンは、血液成分のヘモグロビンなどが体内で合成される過程で生じる物質。それが過剰に蓄積され、発作を起こすのが急性ポルフィリン症だ。

 推定患者数は10万人当たり1人。問題となる遺伝子は特定されているが、それがあるからといって必ずしも発症するわけではない。「発症は20~30代の女性に多いこと、閉経後に症状が改善することから、女性ホルモンが影響すると考えられています」

 飲酒、喫煙、不規則な食事やダイエット、特定の薬の服用も発作の誘因になる。まれな病気のため、誤診も起こりやすい。「腹痛で急性胃腸炎が疑われると抗コリン薬や消化管運動改善薬、背中や脚の痛みがあると消炎鎮痛薬が処方されることが多いのですが、これらは症状を悪化させます」

 ◇尿から診断できる

 診断は尿検査で「PBG(ポルフォビリノーゲン)」という物質を確認することが最も有効だ。ただし症状が出ている時にしか、PBGは検出されない。

 尿が赤褐色になることで判明するケースもある。排尿直後は通常の黄色だが、採取した尿を数分放置するとPBGが酸化し、尿が赤褐色に変わる。今は、遺伝子診断も可能になっている。

 治療はブドウ糖点滴で症状を和らげるのが一般的。近年、ポルフィリンの産生や蓄積を抑える治療薬も登場し、成果を上げている。

「この病気は早期に診断され、適切に治療すれば、日常、支障なく生活できます。しかし治療が遅れると神経障害などの後遺症が残ってしまうこともあります」と堀江医師。

 発作を防ぐためには▽ストレスがかかることを避ける▽水分や糖分を取る▽避けるべき薬を知る―など日常生活の注意も必要だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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