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トイレの備えを万全に
~災害時の健康被害を防ぐ~

 地震や台風による災害はいつ起こるか分からない。特に自然災害が発生する確率が世界でも高い日本で暮らすには、日常の備えが欠かせない。もし被災した場合、命の次に意識してほしいのが二次健康被害。専門家は「排せつ環境の整備が予防につながる。携帯トイレや簡易トイレといった準備が大事」と話す。

「災害時の二次健康被害の対策として、まずはトイレの準備。そして正しい水分補給の知識を持つこと。また、高齢者は常備薬の早期確保の手段を明確にすることなどが挙げられる」と谷口医師

「災害時の二次健康被害の対策として、まずはトイレの準備。そして正しい水分補給の知識を持つこと。また、高齢者は常備薬の早期確保の手段を明確にすることなどが挙げられる」と谷口医師

 ◇脱水症、感染症…症状さまざま

 二次健康被害では、例えばどのような体の不調が起きるのか。済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師は「夏場は脱水症、熱中症への警戒が必要。年間を通しては食欲の低下、栄養不足、口腔(こうくう)環境の悪化、免疫力の低下による感染症深部静脈血栓症や肺塞栓症(エコノミークラス症候群)などを起こす可能性がある。その他にも、持病の進行や心理的不安、睡眠障害など多岐にわたる」と数多くの症状を挙げる。

 地震や台風による大雨、土砂崩れなどの災害発生時に考えられる共通の事態として、断水や停電といった、インフラへの影響がある。谷口医師は「特に、水が使えないとトイレが流れなかったり汚れていたりするため、使用を避けたいあまり、水分摂取を控えてしまう。手洗い・うがいもできなくなると、さまざまな感染症のリスクが高まる」と指摘する。

 ◇水分補給へしっかり食事

 気温の高い季節に避難する場合、水を飲まないと脱水症や熱中症にかかりやすい。「体内の水分が急激に減少するため汗が出なくなり、体温を下げることができなくなると、危険な状態になってしまう」(谷口医師)。

 予防するにはどうしたらいいか。水分は食事からも摂取しているため、なるべく1日に3回食べたい。飲料は真水やジュースだけでなく、イオンを含有する物を選んでほしい。目安として、2、3時間に1回は排尿する程度の水分補給を心掛けよう。

 「それにはまず、トイレがきれいに使えることが前提になる」と谷口医師。衛生的なトイレと水分補給は、災害時の重要なポイントだと分かる。

 ◇口の中も気を付けたい

 体内の水分が不足し唾液の分泌が低下すると、多くの弊害が生じる。谷口医師は「口内炎や虫歯はもちろんのこと、その雑菌が肺に入り、肺炎といった呼吸器系の感染を起こす場合もある」と説く。そのほか、口臭は自分だけでなく周りも不快に感じる。

 液体歯磨きや、水がなくても使える歯磨き粉を避難バッグに入れておくことをお勧めする。歯ブラシがない場合はハンカチやティッシュで汚れを拭き取るなどの手段があるが、水分を小まめに取ることが最善の予防方法だ。

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