一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏

(第17回) 天皇陛下の執刀医に =片付け中、1本の電話

 「珍しく部屋の片付けをしていたら電話がかかってきたんですよ」。2012年2月10日午後3時ごろ、学校法人順天堂の理事長からだった。天野氏が「ここへ電話するように」と伝えられた連絡先は、皇室の医務を統括する宮内庁皇室医務主管。電話すると、天皇陛下の心臓再検査に先立ち、前年の検査結果を東大病院まで見に来てほしいと依頼があった。

 陛下は11年2月にカテーテルを使った冠動脈の造影検査を受けられ、血管の狭窄(きょうさく)が確認されたため投薬治療を続けたが、その後も症状が進行していた。約3カ月後の12年5月には英国エリザベス女王の即位60周年祝賀行事が控えており、参加に向け万全の体調管理が必要とされていた。

 「11年の検査の時も、順天堂理事長経由で緊急の場合の対応をお願いするかもしれないと連絡を受けていた」と天野氏。「だから、また連絡を受けた際にも、それほどびっくりはしなかったんです。陛下に手術が必要になることがあれば、自分が執刀する可能性もあると思っていました」

 天野氏は新東京病院に勤務していた頃から、東大病院循環器内科の永井良三教授(現・自治医科大学長)と付き合いがあり、紹介患者を多数手術してきた。そうした経緯もあり、天野氏に声が掛かったという。

 再検査の結果、陛下の冠動脈3本のうち2本に狭窄が見られた。薬物療法を続けても症状が進行しており、英国訪問も踏まえると早急な治療が必要だった。天野氏ら医師団で検討した結果、冠動脈バイパス手術が有力な選択肢になったという。

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