「医」の最前線 地域医療連携の今

重症化防いで医療費削減を実現
~カギはコーディネートナースの普及~ 【第4回】糖尿病の医療連携④ 嶋田病院内科部長 赤司朋之医師

 福岡県小郡市の嶋田病院で展開されている医療連携の要はコーディネートナースだ。専従の看護師が各診療所を訪問して情報共有を行っている。診療所のスタッフからの信頼度も高く、コーディネートナースは今後さらに活躍が期待されている。

歯科医院の受付で糖尿病連携手帳の提示を呼び掛ける立て札

 ◇定期歯科受診率も向上

 2019年、同病院には糖尿病専門医が1人増え、現在2人体制で診療に当たっている。
通常、患者はかかりつけ医に通院しながら、半年から1年に1回程度を目安に糖尿病専門医を受診し、治療に関する専門的な指導を受けたり、検査を受けたりする。糖尿病医療連携(連携パス)における再診率は9割を超え、患者のHbA1c値は7%台で推移するなど良好なコントロールを維持している。

 06年に赴任して同病院の医療連携の仕組みを立ち上げた赤司朋之医師は「診療所の先生方からは血糖やHbA1cが高かったり、合併症や併存症でコントロールが難しかったりする患者さんが紹介されてきます。治療目標は患者さんの年齢や病態などによって異なるため、数値だけで判断せず、学会の指針を参考にしながら患者さんや診療所スタッフと話し合って目標値を決めています」と話す。

 再診率が高い背景には、診療所での徹底したルーティン検査の実施がある。連携先診療所では体重測定やフットチェックがほぼ100%実施されており、眼科への受診率も80%を超えている。また、歯周病の炎症が血糖値を上昇させるとの報告が出て口腔(こうくう)内のメンテナンスの重要性が指摘されてからは、コーディネートナースが積極的に歯科受診を呼び掛けている。その結果、以前はほとんどされていなかった定期の歯科受診率が49.2%にまで向上した。

 現在、同地区内では43の歯科医院が医科歯科連携に参加している。この地区の取り組みを参考にして、糖尿病連携手帳の第3版には歯科のチェック項目が追加された。また、この連携先の歯科診療所の受付には『連携手帳をお出しください』と書かれた立て札が置かれるようになった。この取り組みも日本糖尿病協会を通して全国へ広がっている。

 「糖尿病の患者さんが歯を失うと、かめなくなることで偏食の原因になったり、野菜の摂取不足などから食後の高血糖を起こしやすくなったりします。また、味覚異常から味付けが濃くなって塩分の摂取量が増えると腎症が悪化し、透析に進行するなど悪循環につながります」

勉強会でより良い連携の在り方を学ぶ

 ◇日本一の糖尿病診療モデル地区に

 嶋田病院で実践されている連携は、赤司医師を中心にかかりつけ医や歯科医、眼科医や調剤薬局など、糖尿病に関わるあらゆる医療機関の協力体制のもと構築されている。連携がうまく進んだ背景について赤司医師は次のように話す。

 「まず大きかったのは、この地区に急性期病院が一つしかなかったことです。連携パス導入に当たって妨げるものがなかったことは幸いでした。地形的に診療圏全体が平野になっているため訪問時の移動が楽にできることに加え、やはり一番は地域の先生方が『患者さんのためになることをしたい』という共通の思いがあったからだと思います」

 赤司医師は専従のコーディネートナースを全国に広めたいと講演活動などにも力を入れている。「講演を聴いた先生方は意気込んで帰られますが、実際にこのシステムを導入するとなると、経費や診療報酬の問題などがあって、なかなか難しいようです」

 現状では専従のコーディネートナースに対する診療報酬は加算されていないため、嶋田病院では病院の持ち出しとなっているが、それでも経営面ではプラスになっていると赤司医師は指摘する。

 「最良の医療を提供することで信頼感が生まれ、必然的に患者数が増え、治療法に迷うかかりつけ医には安心感を与えることができます。適切な医療を行うことで糖尿病による重症化も予防できます。実際、小郡市の人工透析の導入率は県内では最も低いので、行政にとっても医療費の削減につながっていると思います」

 赤司医師が目指すのは「日本一の糖尿病診療モデル地区」。患者にとって最良の医療を提供するには、まず医療者の知識の底上げが必要と考え、一人でも多くの医療スタッフが糖尿病に関心を持って療養指導を行えるよう、教育にも熱心に取り組んでいる。

 「糖尿病診療モデル地区としての構想は8合目まで到達したと思います。あとは、コーディネートナースをいかに広めていくかということです。診療報酬という大きな壁がありますが、これからも実績を重ねていきたいと思っています」(看護師・ジャーナリスト/美奈川由紀)

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