こちら診察室 100歳まで見える目
アレルギー性結膜炎の意外と知らないアレコレ 【第9回】
◇アレルギー性結膜炎の新しい流れと治療
アレルギー性結膜炎の新しいガイドラインは2021年に第3版が出ています。これによると、アレルギー性結膜炎を持っている人の割合が17年調査で約5割(48.7%)に上ると記載されています。これは1993年調査に比べて3倍近い割合です。
薬の使い方の推奨も変わりました。アレルギー性結膜炎の重症(春季カタルやアトピー性角結膜炎)には積極的に免疫抑制剤の点眼を使うべきとされ、鼻炎など、目の症状以外を伴う場合は抗ヒスタミン剤の内服も有効と記載されています。市販でも有効なものが発売され、処方医薬品では「第3世代」と呼ばれる眠くなりにくい強い効果を持つものも認可されています。
ちなみに、これらの治療は症状を抑えるための対症療法と呼ばれるものです。出た症状を抑えるのではなく、アレルギーの症状そのものが出なくなる治療も開発されてきました。それが舌下免疫療法で、現在、スギまたはダニのアレルギーに対しての薬が出ています。これらのアレルゲンを含んだ薬剤を毎日舌下に置くことで体をアレルゲンに慣らしていき、アレルギー症状を抑える治療です。舌下免疫療法は日本で多く行われており、興味のある方は専門の施設に相談してみてください。
◇アレルギーは我慢すべきではない
パナソニックは社会人の花粉症に関する調査を行い、花粉症による労働力低下は著しく、日本全体の経済損失は1日当たり約2340億円と推計しました。これはすなわち、花粉症の症状を我慢すべきではないということです。
さらにアレルギー性結膜炎とコンタクトレンズは相性が悪く、コンタクトユーザーは目の症状が強くなりがちです。近視人口も増える中、アレルギー性結膜炎はより負担の大きなものになっているでしょう。一方、アレルギー治療の選択肢はかなり出そろった感があります。アレルギー性結膜炎の症状を知り、正しい対策を知り、より良い生活を送っていきたいものです。(了)
岩見久司医師
岩見久司(いわみ・ひさし) 大阪市大医学部卒、眼科専門医・レーザー専門医。 大阪市大眼科医局入局後、広く深くをモットーに多方面に渡る研さんを積む。ドイツ・リューベック大学付属医用光学研究所への留学や兵庫医大眼科医局を経て、18年にいわみ眼科を開院。老子の長生久視(長生きして、久しく目が見えている状態)が来る時代を願い、22年に医療法人社団久視会に組織を変更した。現在は多忙な診療を行う傍ら、兵庫医大病院で非常勤講師として学生や若手医師に対して教鞭をとる。
- 1
- 2
(2025/01/15 05:00)
【関連記事】