こちら診察室 膝の痛みと治療法の新たな選択肢

膝の「ポキポキ」「パキパキ」音が気になる人へ
~考えられる疾患とは?~ 【第3回】

 ・膝にこわばりや痛みが出る

 ・階段の昇り降りがつらい

 ・膝に水がたまる

 症状が進行すると、膝関節が変形し、歩行が困難になったり、安静時にも強い痛みが出たりすることがあります。日常生活に大きな影響を与えるため、早めに対処することが大切です。

 ・変形性膝関節症の治療法

 変形性膝関節症は初期段階で進行を遅らせることが可能です。痛みを和らげるために痛み止め(消炎鎮痛薬)やサポーターを使用し、筋力強化のための筋トレやストレッチを行う保存療法が一般的で、特に運動療法が効果的です。

 また、ヒアルロン酸注射で関節の潤滑を助け、痛みを軽減することもあります。

 保存療法で効果がない場合、骨のバランスを整える「骨切り術」や「人工膝関節置換(ちかん)術」が検討されます。

 近年では、手術以外の選択肢として「再生医療」を選ぶ方も増えています。

 ◇膝が「ピキッ」「コリッ」と鳴る

 ピキッ、コリッという何かが破裂したような音。考えられる原因は何なのでしょうか。

 ・膝に引っ掛かり感や痛み「半月板(はんげつばん)損傷」

 半月板が損傷すると、膝から音がすることがあります。半月板は膝関節の内外に1枚ずつあり、アルファベットの「C」の形をした軟骨です。スポーツで損傷することが多いですが、加齢によっても傷つきやすく、日常の軽い負担でも損傷することがあります。損傷した半月板が欠けたり断裂したりすると、その破片が膝関節に挟まって、膝の音や可動域の制限などの症状が出ることがあります。         

半月板の仕組み(ひざ関節症クリニック作成)

半月板の仕組み(ひざ関節症クリニック作成)

 ・半月板損傷の治療

 半月板損傷の治療法は、まず手術を避け保存療法を基本に行います。具体的には、ヒアルロン酸注射やテーピング、サポーターを使って痛みや負担を軽減し、自然治癒を促します。しかし、半月板の外縁(がいえん)にしか血流がないため、内縁を損傷すると自然治癒が難しく、手術が必要になることが多いです。保存療法に効果が見られない場合も手術が検討されます。手術には半月板切除術と半月板縫合術があります。

 ◇膝が鳴るのは放置NG

 膝が鳴る原因や疾患に、心当たりはありましたか? この中で特に注意が必要なのが「変形性膝関節症」です。潜在的な患者を含めると、3000万人の日本人が患っているとされていること、そして進行性の疾患であることが何よりの理由です。最悪の場合には、膝関節を人工関節に取り換えることになる疾患です。また、半月板や靱帯(じんたい)の損傷など、別の疾患が引き金となって変形性膝関節症を発症してしまう可能性もあります。

 痛みや違和感がある場合はもちろん、この記事でご紹介した疾患のどれかに心当たりがあれば、早めに整形外科を受診するのがベストと言えるでしょう。(了)

尾辻正樹理事長

尾辻正樹理事長

 尾辻正樹(おつじ まさき) 医療法人社団活寿会理事長。05年鹿児島大学病院初期臨床研修、07年同大学病院整形外科入局、11年埼玉県内の整形外科にて勤務、18年東京ひざ関節症クリニック銀座院入職、18年横浜ひざ関節症クリニック院長就任、22年から現職。

 札幌ひざ関節症クリニックと仙台ひざ関節症クリニックの院長を兼任。日本整形外科学会認定専門医、再生医療学会認定医。

 参考文献

【1】「Subjective Crepitus as a Risk Factor for Incident Symptomatic Knee Osteoarthritis: Data From the Osteoarthritis Initiative.」Lo HG他 Arthritis Care Res 2018 Jan; 70(1):53-60

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