こちら診察室 コロナ禍のスキンケア=手洗い、マスクによる肌のトラブル対策

多様なマスクトラブル~肌に当たる部分に症状~(野村有子・野村皮膚科医院院長) 第6回

 マスクによる肌トラブルでは、かゆみやヒリヒリ感、ちくちく感、肌の赤み、ぶつぶつなど多彩な症状を認めます。ただし、これらの症状がマスクによるものなのか、そうでないのか、まず見極める必要があります。マスクによるトラブルの場合は、必ずマスクが肌に当たっている部分に限って症状が出ます。「マスクをしていると見た目はきれい」なのに、外してみてびっくり、というわけです。

サーモグラフィー画像

 ◇二つのマスクのデータ比較

 ここで一つのデータをお示しします。私の医院を受診した40~60代の健康な女性4人に、布マスク(肌側がシルクのファブリックケアマスク)と一般的な医療用の紙マスク(不織布製のサージカルマスク)をそれぞれ3時間ずつ着用してもらい、その後でマスクを外した直後の皮膚の温度、水分量、油分量を測定して、皮膚の状態をチェックしました。また、顔全体の温度の違いを調べるために、サーモグラフィーの撮影も行いました。

 紙マスクを使用する際には、着用前に顔の右半分だけに、抗菌や保湿作用などがあるローションを使った保湿ケアをしてから、使用してもらいます。

 以下がその結果です。測定値は4人の平均値を取りました。

マスクの種類で異なる皮膚温度

 ◇皮膚の温度に差

 最初に皮膚の温度についてです。布マスクの場合は、マスクをしている部分としていない部分の温度差はほとんどなく、サーモグラフィー画像でも肌全体の温度とマスクの温度がなじんでいるように見えます。

 一方、紙マスクの場合は、外した後の温度はむしろ低くなっていました。サーモグラフィー画像では、紙マスクそのものの温度が低く撮影されており、外した直後は鼻の頭から頬にかけては、赤みが強く、温度が高く撮影されていました。

紙マスクは水分量、油分量とも低下

 ◇バリアー機能が低下か

 また、水分量と油分量にも違いがありました。布マスク着用により、皮膚の水分量は多少増加し、油分量は多少減少しましたが、マスクを着用していない部位との差はほとんどありませんでした。しかし、紙マスクの場合は、皮膚の水分量、油分量とも低下しており、皮膚バリアー機能が低下したと推察されました。

 紙マスクでも保湿ケアを行った場合は、水分量・油分量とも上昇することが分かり、紙マスクを着用する前には、皮膚を守るために適切な保湿ケアが必要なことが確認されました。

 ◇症状に合わせ、さまざまな治療

 この調査からも、紙マスクに覆われた部分の皮膚は乾燥しやすいことが分かります。マスクによる肌トラブルに対して皮膚科での治療は、それを前提に、それぞれの症状に合わせて行います。

 例えば、かゆみを伴っている場合は、短期間ステロイド外用薬で、かゆい炎症を取り除く必要があります。かゆみがひどい場合には、抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めの飲み薬を併用することもあります。また、ヒリヒリ感やちくちく感などの刺激症状や、かさつきが主な症状の場合は、ワセリンやアズノール軟膏などの皮膚を保護する作用の高い保湿剤を使用します。

 一方、皮膚表面の皮脂のバランスが崩れてアクネ菌などが繁殖してしまい、ぶつぶつした「にきび」が生じている場合は治療が異なります。ステロイド外用薬や油成分の多い保湿剤は逆に症状を悪化させてしまうので、注意が必要だからです。

 「にきび」には抗菌作用のある塗り薬やアダパレン、過酸化ベンゾイルなどの毛穴のつまりを改善する塗り薬を使用します。「にきび」が腫れて痛みを伴っている時は、抗生物質の内服も行います。さらに、「にきび」とかさつきが混在している例も多くあります。その場合には、顔全体にローションタイプの保湿を使用し、その後に重ねて「にきび」の部分には「にきび」用の外用薬、乾燥している部分には油分の多い保湿剤を塗る、というような使い分けが必要となります。

 日常に使用するスキンケア製品の選び方も重要です。かゆみや乾燥がある場合は、敏感肌用の製品を選びます。「にきび」がある場合は、ノンコメドジェニックという表記がある「にきび」対応の製品を選びます。皮膚科では、幾つかのサンプルをお渡しして肌に合うか試してもらうこともあります。

マスクにきび

 ◇皮膚炎と「にきび」が改善

 ここで、実際の患者さんを例に挙げて説明しましょう。最初は、「マスク皮膚炎」だった50代の女性です。紙マスクのこすれている頬と顎の部分に、赤みと色素沈着を認め、マスクのひもが食い込んだ跡が付いていました。ひもの長さが調整でき、肌に当たる部分をシルクのファブリックケアマスクに変え、保湿ケアを行ったところ、赤みと黒ずみは少しずつ改善していきました。

 もう一人は、「マスクにきび」に悩まされていた20代の女性です。この女性も紙マスクを使っていたのですが、鼻の周囲から頬にかけて「にきび」と赤みの状態が悪化しました。紙マスクの下にガーゼなどの綿の布を入れ、ノンコメドジェニックの化粧品に変更したところ、徐々に「にきび」の状態は改善していきました。

 このように、病態をきちんと把握し、きめ細かな治療やスキンケアをしないと重症化してしまうこともあります。マスクによる肌トラブルが治りにくい場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。今、どのようなトラブルが生じているのか、きちんと報告して診断してもらい、治療を始めることが大切です。もちろん、マスクの選び方や日頃のスキンケアも大事です。マスクを上手に使いながら、トラブルのない健やかな肌をキープしていきたいですね。(了)

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