こちら診察室 コロナ禍のスキンケア=手洗い、マスクによる肌のトラブル対策

新型コロナでマスク必需品時代に
~肌トラブルを賢く防ごう(野村有子・野村皮膚科医院院長)~ 第4回

 新型コロナウイルス感染症対策として、マスク着用が欠かせない時代となりました。このため、長時間のマスク着用による肌トラブルが増えています。さまざまなマスクが発売されており、個性的で自分らしさをアピールする物もよく見掛けるようになりました。しかし、自分に合っていないマスクを使用することによる「マスクトラブル」も増えています。さらに、マスクの使用方法が間違っている例が多いのも実情です。

正しくマスクを選び、正しく着用

正しくマスクを選び、正しく着用



 ◇マスクを使う目的は?

 そもそもマスクは、唾や飛沫(ひまつ)などを封じ込めて周囲に拡散しないようにするための物です。さらに、外気からのウイルスや花粉などが鼻や口から入り込まないようにすることも重要な役割です。

 マスクは感染症予防や花粉症対策には必須のアイテムです。正しくマスクを選んだ上で、正しく着用することにより、その効果はより確かなものとなります。また、自分のライフスタイルに合ったマスクを選ぶことも大切です。マスクについて改めて見直してみましょう。

 マスクの着用はとても大切ですが、肌にダメージを及ぼすこともあります。マスクによる肌トラブルの主な症状は、かゆみ、ヒリヒリ感、ちくちく感、肌の赤み、そしてニキビの悪化です。その原因の一つは、蒸れによる「蒸れ蒸れマスク」、次に素材が原因となる「ちくちくマスク」、そしてもう一つが摩擦による「ずれずれマスク」です。

 ◇「蒸れ蒸れマスク」

 マスクを長時間着用していると、息に含まれている熱気や湿気、汗が皮膚とマスクの間にたまって蒸れてきます。蒸れにより皮膚の角質が必要以上にふやけてはがれやすくなり、皮膚バリアー機能が低下して、かゆみやヒリヒリ感、赤みなどの皮膚炎が生じやすくなります。さらにふやけた角質で毛穴が詰まり、ニキビが悪化しやすくなります。蒸れは、マスク着用に伴うトラブルの最大の要因なのです。

 一方、マスクを外した瞬間、皮膚の水分は蒸散して急速に乾燥していきます。乾燥して皮膚の水分量が少なくなると皮膚のバリアー機能は低下して、マスクによる刺激をより受けやすくなり、さらに肌トラブルが増える、という悪循環に陥ってしまいます。

 ◇保湿がポイントに

 マスクによる肌トラブルの予防には、保湿が重要です。蒸れているから保湿は不要だと思いがちですが、蒸れと潤いは別です。マスクをする前に、保湿をして肌に潤いを与え、皮膚のバリアー機能を整えておかないと、「マスク皮膚炎」や「マスクニキビ」が生じやすくなるからです。

 皮膚が乾燥しやすい場合は、マスク着用前に保湿のローションやクリームできちんと肌を整えることが大切です。また、皮脂が多くてニキビができやすい場合は、ニキビ対応になっていると言われる「ノンコメドジェニック」のローションなどを使用します。唇が荒れやすい場合は、刺激の少ないリップクリームやワセリンなどで保湿を心掛けましょう。

 マスクを外した後は、すぐにクレンジングと洗顔を行い、肌に付着している汚れを丁寧に落としましょう。その後に保湿ケアを忘れないでください。男性の場合は、毎朝、カミソリを使ってひげそりを行うことが望ましいと考えます。ひげが伸びていることにより、マスクがずれやすくなったり、汚れが付着しやすくなったりするからです。

 なお、不織布のマスクは気密性が高く蒸れやすいため、使用する場合は、ガーゼや使い古したTシャツなどの綿の布や綿マスクなどを、不織布の間に挟むと湿気を吸ってくれます。ガーゼや布は時々交換すると、さらに効果的です。

 このように保湿ケアやマスクの蒸れ対策をしても、口の周りや頬の肌トラブルが改善しない場合は、使用しているスキンケア製品による接触皮膚炎や口唇ヘルペス、膠原(こうげん)病など他の病気も考えられますから、皮膚科専門医の診察を早めに受けてください。

 ◇「ちくちくマスク」

マスクを着けたテーマパークの来園者

マスクを着けたテーマパークの来園者

 一方、マスクを着用したときに、ちくちくするなど刺激感を感じたり、かゆみが生じたりする場合は、マスクの素材が肌に合っていない可能性が高いと考えられます。繊維がけば立っていたり、繊維の加工段階で含まれている成分などに皮膚が反応したりすることもあるからです。その場合は、違うメーカーや違う素材のマスクを使用し、肌に合うものを見つけることが大切になります。

 また、繰り返し同じマスクを使用したり、ゴシゴシこすり洗いをしたりしたマスクでは、繊維が傷められてけば立っていることがあります。この場合は、新しいマスクに取り換える必要があります。

 ◇高機能マスクに高評価

 財団法人日本産業デザイン振興会が主催する「2020年度グッドデザイン賞(Gマーク)」で二つのマスクが選ばれました。それぞれのマスクについての審査委員のコメントが、マスクの性能を端的に表しています。

 一つ目のマスク「ファブリックケアマスク」には「コロナ禍によりマスクに求められている性能は大きく変化している」とした上で、この製品がコロナ禍の前より、肌荒れが起きにくいように機能性とファッション性を備えたマスクとして開発されており、結果的にコロナ禍での需要に合致したのです。

 「調整の効く耳ひもやノーズフィットなど、布マスクでありながら、ぴったりと顔に合わせて装着できる点は高く評価できる。長年培っていたシルクなどの天然素材のノウハウを生かし、ユーザーと地球環境、双方の価値を誠実にまとめ上げた」と評価されました。

 もう一つの「ナノエアーマスク」についても、「コロナ禍でマスクが品薄になり、国内でのマスク増産に迅速に着手していくスピード感の中で、息苦しくないように施された口元のワイヤや、耳ひもの柔らかさなど、使用者への負担を軽減する工夫が随所に凝らされている」と評価されています。

 ◇ライフスタイルに合わせて

 このように、デザインのみならず機能性に優れたマスクを選ぶことも大切になります。機能性としては、ウイルスや花粉対策になっていること、蒸れにくいこと、ノーズフィットやワイヤの使用により、顔にフィットして息苦しくないこと、などがあげられます。さらに、耳ひもが柔らかく調整できる物もお勧めです。

 さまざまな素材や形のマスクが販売されています。この中でマスク選びに大切なのは、どのような場面でマスクをするのかを考えて選ぶことです。

 まず、人混みの中や人と話をすることが多い仕事などの場合は、第一にウイルス対策になるマスクを選びましょう。ウイルスの侵入を阻害する高性能の不織布マスクや、抗ウイルス加工が施してある生地のマスクなどがお勧めです。形についても、鼻や頬、顎とマスクの間に隙間ができないようなものを選び、よくフィットするように着用することも大切になります。

 換気の良い屋外や、あまり人とは接しない場面が多ければ、柔らかくて汗を吸う綿や絹などの布マスクがいいでしょう。肌あたりが良く快適です。人と話す場合には、このような布マスクの上に不織布のマスクをする方法もあります。

 一日中マスクをして蒸れてきてしまう場合には、昼食後などの機会にマスクを新しい物に取り換えるとよいでしょう。複数のマスクが必要になりますが、清潔で快適なマスクを着用することが肌荒れの防止と感染症対策につながります。(了)

野村有子院長

野村有子院長

 野村 有子 氏(のむら・ゆうこ)
 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。

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