こちら診察室 人生が鼻でこんなにも変わる⁉ 鼻にまつわるドクターのハナシ
「副鼻腔炎」って何ですか?
~専門医が徹底解説~ 【第1回】
皆さん、こんにちは。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の荒木進です。今回から始めるコラムですが、第1回目は、多くの方が経験したことがある、あるいは聞いたことがある「副鼻腔炎」について詳しく解説していきます。
副鼻腔炎は、一般的に「蓄膿症」とも呼ばれる病気で、私たちの日常生活に大きな影響を与える可能性がある呼吸器系の疾患です。この記事を通じて、副鼻腔炎について正しく理解し、適切な対処法や予防法を学んでいただければと思います。
◇基本的な知識と症状

副鼻腔炎は副鼻腔の薄い粘膜が炎症を起こしている状態(モーニングクリニック六本木HPから)
まずは、副鼻腔炎の基本的な知識と症状について解説します。副鼻腔は頭蓋骨の中にある空洞で、鼻腔と連結している空間です。具体的には、上顎洞(両頬の内側)、前頭洞(額の内側)、篩骨洞(両目の間)、蝶形骨洞(鼻の奥)の四つのペアがあります。これらの空洞は呼吸器系の一部として重要な役割を果たしています。
◇副鼻腔に炎症が起こる病気
副鼻腔炎は、その名の通り副鼻腔に炎症が起こる病気です。この炎症は、細菌やウイルスの感染、アレルギー反応、または環境因子によって引き起こされます。
副鼻腔炎の症状は多岐にわたりますが、最も一般的なのは鼻づまりと鼻水です。鼻づまりと鼻水の症状の特徴や持続期間によって診断名が異なることがあります。
また、副鼻腔炎には主に急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の二つのタイプに分けられます。これらは症状の持続期間によって区別されますが、治療法も異なる場合があります。
◇慢性副鼻腔炎は3カ月以上続く
慢性副鼻腔炎は、12週間(3カ月)以上症状が持続する状態を指します。代表的な症状には、鼻水、後鼻漏、鼻づまり、頬・眉間・額などの痛み、嗅覚障害があります。
急性副鼻腔炎の鼻水は膿が多いため青みがかっていますが、慢性期では粘りが強く白っぽい鼻水になります。また、後鼻漏という、鼻水が鼻の穴から出てくるだけでなく、喉の方に流れてくる状態になり、後鼻漏があると咽頭炎や気管支炎を起こしやすいため注意が必要です。
慢性副鼻腔炎は、急性副鼻腔炎が適切に治療されなかった場合や、繰り返し感染を起こした結果として発症することがあります。また、アレルギーや環境因子も慢性化の要因となる可能性があります。
急性副鼻腔炎の治療において、マクロライド系抗生物質の少量長期投与療法が注目されています。この方法は、通常の抗生物質療法に加えて、粘膜の繊毛機能を改善する効果があり、マクロライドを少量で2〜3カ月間継続して投与することで、副鼻腔炎の症状改善が期待できます。 特に軽症例では、この療法単独でも効果が見込まれ、完治の可能性も高まります。
◇風邪やインフルの後に起こしやすい急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は、多くの場合、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染後に細菌感染が副鼻腔に及ぶことで発症します。 症状の特徴として、頭痛、顔面の痛み、歯痛、嗅覚障害などがあり、副鼻腔に膿がたまることで引き起こされます。
原因は主に風邪やインフルエンザ後の二次感染ですが、潜水や飛行機搭乗による気圧変化も引き金となることがあります。
治療法としては、抗生物質、炎症を抑える薬を1週間程度服用するのが基本です。また、鼻づまりなど不快な症状を解消するため、膿を吸い出して鼻の中をきれいにする処置をした上で、細かい粒子状にした薬剤を副鼻腔の隅々にまで届けるネブライザーを使った治療も行います。なお、軽症の場合は自然に回復することもあります。
これらの症状は通常1〜4週間程度で改善しますが、放置すると慢性化する可能性があるため、適切な治療を受けることが重要です。
- 1
- 2
(2025/02/05 05:00)
こちら診察室 人生が鼻でこんなにも変わる⁉ 鼻にまつわるドクターのハナシ
-
2025/03/19 05:00
鼻茸って何?
~嗅覚障害、鼻詰まり~「鼻が詰まってスッキリしない」「匂いを感じにくくなった」。そんな症状に悩んでいませんか? もしかす…
-
2025/03/05 05:00
重度の鼻づまりは手術が必要
前回に引き続き「鼻中隔湾曲症」のお話です。今回は鼻中隔湾曲症の治療法、手術以外の対処法、手術を受け…
-
2025/02/19 05:00
日本人の8割の鼻が曲がっている?~みんな知らない鼻の悩みとは~
今回から2回に分けて、「鼻中隔湾曲症」について詳しく解説していきます。鼻中隔湾曲症は、鼻づまりや鼻…