ハンチントン病〔はんちんとんびょう〕 家庭の医学

 ハンチントン病は、アメリカのハンチントンによってあきらかにされた疾患です。35歳前後から踊るような不随意運動で発症し、徐々に認知症が進んでいきます。原因は第4染色体に遺伝子の異常があり、常染色体優性遺伝をします。つまり、子どもには2分の1の確率で発症します。
 ハンチントン遺伝子は第4染色体短腕の端にあり、ここにCAGCAGCAGとくり返す部分があります。これが39回以上になると発病します。CAGに対するアミノ酸はグルタミンで、これをCAGリピート病、ポリグルタミン病ということもあります。
 病気の場所は、大脳の中心にある基底核の一部、尾状核です。病気の進行とともにこの神経細胞が死んでいき、尾状核が小さくなっていきます。さらに大脳皮質の神経細胞もなくなっていき、大脳皮質の容積が小さくなります。この結果、大脳の中にある脳室(髄液の入っている空間)が風船のようにひろがっていきます。診断はCT(コンピュータ断層撮影)かMRI(磁気共鳴画像法)で確定され、遺伝子診断も可能になっています。
 10年ないし20年のうちに寝たきり状態となり、肺炎や窒息、あるいは頭の打撲による硬膜下血腫などで不幸な結果になることが多い病気です。
 ハンチントン病は国が指定する難病医療費助成制度の対象疾病(指定難病)になっています。
 ハンチントン病以外の、子どもにみられるリウマチ熱による小舞踏病(シデナム舞踏病)もあります。この病気にかかった妊婦には妊娠前期に舞踏病が発症することがあります(妊娠性舞踏病)。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)