慢性(化膿性)中耳炎〔まんせい(かのうせい)ちゅうじえん〕 家庭の医学

 急性中耳炎が治りきらずに鼓膜に穿孔(せんこう:穴)が残り、細菌の感染による炎症が反復、慢性化して耳だれをくり返す中耳炎をいいます。鼓膜穿孔や中耳の粘膜の腫脹などにより難聴が生じます。炎症が慢性化すると、中耳腔(ちゅうじくう)に肉芽(にくげ)が形成されたり、耳小骨の動きがわるくなったり、破壊されたりします。

[治療]
 中耳腔の分泌物を除去し、抗菌薬の内服や点耳薬で耳だれをとめます。耐性菌でない場合はこの処置で通常耳だれはとまりますが、穿孔は残ります。耳だれを停止するためと聴力の改善のためには、手術(鼓室形成術)が必要となります。この手術は全身麻酔下におこなうことが多く、炎症組織を除去し、耳小骨や鼓膜を再建して聴力の回復をはかります。慢性中耳炎の児童・生徒は学校での水泳が禁止されることもあるので、手術で完治させることがすすめられます。QOL(quality of life:生活の質)の向上のために、手術は大きな貢献をします。
 慢性中耳炎を放置すると進行し、難聴はさらに悪化します。手術をすれば再発することはほとんどなく、快適な生活を送ることができます。18歳未満の場合、育成医療制度の援助があります。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 教授〔耳鼻咽喉科・頭頸部外科〕 山岨 達也
医師を探す