ACTH分泌腫瘍(クッシング病)〔ACTHぶんぴつしゅよう(くっしんぐびょう)〕 家庭の医学

 血中の副腎コルチゾールの分泌が過剰になると、特有な症状を示します。これがクッシング症候群です。下垂体ACTH産生腫瘍により副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰に分泌されて副腎を刺激すると、副腎コルチゾールの分泌が増加します。この場合をクッシング病といいます。
 またコルチゾール過剰は、コルチゾールを過剰に分泌する副腎の腫瘍によっても起きます。肺がんなどの腫瘍がACTHを分泌して同様の症状を示すことがまれにあります(異所性ACTH産生腫瘍)。クッシング病と副腎腫瘍によるクッシング症候群(副腎コルチゾール産生腫瘍)の症状はほとんど同じです。ただしクッシング病では、血液中ACTH濃度が高いこと(副腎性の場合は、血液中ACTH濃度は低値)や下垂体に腫瘍が存在することが異なります。血液中ACTH濃度が高くなると爪、くちびるなどに色素が沈着し、色黒になることがあります。

[診断]
 特徴的な身体所見、血中のコルチゾール、ACTHがともに高いこと、尿中のコルチゾール排泄(はいせつ)が高いこと、MRI(磁気共鳴画像法)検査で下垂体腫瘍を確認することで確定します。

[治療]
 経蝶形骨式腺腫摘出術(鼻孔から下垂体に達して腫瘍を摘出する手術)で下垂体腫瘍を摘出するのが原則ですが、手術ができなかったり、摘出ができなかった場合にはコルチゾールの合成を抑制する薬剤や、外部から下垂体腫瘍に放射線を照射する治療がおこなわれます。2018年より徐放性のソマトスタチン誘導体のパシレオチドパモ酸塩も用いられています。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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