先端巨大症〔せんたんきょだいしょう〕 家庭の医学

 下垂体の成長ホルモン(GH)分泌細胞が腫瘍をつくり、過剰のGHを分泌する疾患です。GHとインスリン様成長因子(IGF-1)の血中濃度が増加する結果、四肢末端の肥大が生じます。足や指が太くなり指輪、手袋、靴のサイズが合わなくなります。
 顔つきも特徴的で、鼻翼(小鼻)、口唇、舌、頬骨(きょうこつ)や上額骨(まゆげの部分の骨)などが肥大します。声は低く、こもって聞こえます。からだの脂肪は減少し、筋肉量は増加して体重もふえます。症状の進行が緩徐なため、気づくのが遅れます。以前の顔写真と比較するとだいたいの発症時期がわかります。
 男女とも中年期に発見されることが多く、骨の発育が停止する前の若年期に発症した場合は、身長がいちじるしく高くなり、巨人症と呼ばれます。糖尿病をしばしば合併します。これらの症状と、血液中のGHやIGF-1濃度が健常人に比べて高いこと、MRI(磁気共鳴画像法)検査などの画像診断で下垂体に腫瘍があることで診断します。

[治療]
 腫瘍を経蝶形骨式腺腫摘出術(鼻孔から下垂体に達して腫瘍を摘出する手術)で外科的に摘出するのが原則です。手術ができなかったり、腫瘍を完全に摘出できなかった場合には、内科的治療や放射線治療がおこなわれます。
 内科的治療にはGHの分泌を抑制する薬剤が使用されます。ソマトスタチンはGHの分泌を抑制する視床下部ホルモンですが、この誘導体が先端巨大症の治療に有用です。現在は月に1回の注射で十分な効果が期待できる徐放性のソマトスタチン誘導体(酢酸オクトレオチド、酢酸ランレオチド)が用いられていますが、2016年よりパシレオチドパモ酸塩も用いられています。ソマトスタチン誘導体はGH分泌を抑制するだけでなく、腫瘍の縮小作用もあります。あわせて、GHの作用を抑制するGH受容体拮抗薬(ペグビソマント)の注射も使用されます。内服薬としてドパミンと類似の作用を持つドパミン作動薬(ブロモクリプチンなど)も使用されます。ドパミン作動薬は健常人ではGH分泌を促進しますが、先端巨大症ではGH分泌を抑制するので治療に用いられています。しかしその効果は限られており、ソマトスタチン誘導体やGH受容体拮抗薬に比べ効果は弱いものの、内服でよく、軽症例には使用されます。
 治療が奏効して、血中のGHやIGF-1の濃度が低下すれば、症状も軽快します。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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