糖尿病の症状 家庭の医学

 糖尿病の典型的な症状は高血糖による症状です。のどがかわく(口渇〈こうかつ〉)、水をよく飲む(多飲)、尿の回数や量が多い(多尿)、よく食べるのに体重が減る(体重減少)、体がだるい(全身倦怠〈けんたい〉感)などです。これらの糖尿病の症状は、インスリンのはたらきが低下し、エネルギーの利用が不十分になることや、高血糖のために尿糖の排泄(はいせつ)量がふえ、それに伴って尿量がふえることによるものです。
 これらの症状は1型糖尿病の発症時では多くみられますが、じわじわ高血糖になる2型糖尿病では必ずしも自覚しない場合が少なくありません。病歴をくわしく聞けば、長い経過中にこのような症状を自覚したとしても、外来を受診するときにはなんの症状もうったえがないのもしばしばです。むしろ、多くの2型糖尿病では無症状であると考えるべきかもしれません。また、たとえ高血糖が持続しても、本人の自覚症状は乏しいことにも注意する必要があります。症状がないからといって安心してはいけません。
 糖尿病にみられる症状として重大なものは、糖尿病による合併症による症状です。目がかすむ、視力が低下してきた、足がしびれる、足が痛む、浮腫(むくみ)が出てきた、おでき(皮膚の化膿〈かのう〉性疾患)ができやすい、陰部がかゆい、性欲が低下し性機能の低下がみられるなどの症状は、糖尿病の慢性合併症として併発しやすい症状です。糖尿病が発症してかなりの期間がたってからみられる症状です。しかし、実際には検診で尿糖が陽性である、血糖値が高い、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が高いといった糖尿病と診断できる検査データがあってもなんの自覚症状(高血糖にもとづく)もないために、長期間にわたって放置し、合併症の症状が出てはじめて受診する人は少なくなくありません。
 糖尿病患者にみられるおもな症状を表にまとめて示します。

(執筆・監修:東京女子医科大学附属足立医療センター 病院長/東京女子医科大学 特任教授 内潟 安子)
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