自助具 家庭の医学

 自助具とは、基本的に日常生活や、生活関連動作の障害を改善する道具の一つですが、一般に使用されている道具や器具を、使いやすいように工夫や改造をしたり、その目的のために、開発されたものです。食事、整容、更衣、書字、排泄(はいせつ)、家事などの基本的生活動作(ADL:activities of daily living)から、電話など通信機器や、環境制御装置の一部まで含めて、身のまわりの生活活動に関連したものが対象となり、それによって、いろいろな動作を可能にして自立度を高めることができます。

 生活の手段的活動や職業、あるいは介護のための機器類も含めて、福祉機器とかテクニカルエイドとして、まとめられることもあります。たとえば食事動作では、箸やスプーンをにぎる動作、食べ物を取ったりすくう動作、食べ物を口へ正確に運ぶ動作がありますが、にぎる動作では、「握り」部分を太くしたり、障害や程度に応じたかたちの工夫をします。
 食べ物をすくって口に運ぶ動作では、手指の機能よりも、手関節、前腕、ひじ関節などの協力した動作によるところが大きいため、すべての動作を補うことがむずかしいものの、スプーンの柄の長さや彎曲(わんきょく)で機能を代償します。
 ほかには、コップホルダーなど、食器を把持(はじ)するものや、食器の縁を高くして片手ですくっても、食べ物がこぼれないように工夫されているものもあります。

■代表的な自助具類

□食事動作用品
 滑りどめマット…皿などを固定して食物をすくいやすくする
 フードガード…皿の縁に取りつけて食物のこぼれるのを防ぐ
 スプーンホルダー…握力の弱い人用
 ボトルオープナー…片手でびんのふたがあけられる
 長柄付きスプーン…関節の運動制限に対して有効
 カフ付きスプーン…にぎれない人がスプーンを保持する
 マジックテープ付きコップホルダー…にぎれない人用

□更衣動作用品
 ストッキングエイド…関節の運動制限でも靴下をはけるようにする
 ボタンエイド…手指の変形や筋力低下、失調症などに対して有効

□入浴動作用品
 滑りどめマット…タイルなどの上に敷き、転倒防止
 バスブラシ、長柄付きブラシ、ループ式タオル…からだを洗うため
 バスミット…片手での洗顔、洗体用
 バスボード…浴槽の出入り用

□排泄動作用品
 装着集尿器…男性用、女性用あり
 坐薬挿入器…片手用と両手用あり
 ふきふきリーチャー…排泄後始末用

□整容動作用品
 長柄付き歯ブラシ(リーチャー)…関節運動障害に対して有効
 長柄付きくしブラシ(リーチャー)…関節運動障害に対して有効
 片手用爪切り…てこ付き、足踏み式など
 チューブしぼり器…歯みがきチューブ用
 電気かみそりホルダー…ひげそり用
 吸盤付き手洗いスポンジ…片手しか使えない人用

 このほかにも、ドアのノブ、水道栓、ガス栓などを回しやすくする長柄、書字用ホルダー、電話ホルダー、各種リーチャー(離れているところに届かせるための工夫)など、自助具の種類は多種多彩です。言語や文字によるコミュニケーションが、困難な場合に用いるコミュニケーション機器も、日常生活に取り入れることがあります。
 これらを有効に使いこなすことにより、日常生活の自立度を高め、活動の範囲をひろげるために役立てます。それは、まひや拘縮(こうしゅく)の回復訓練と並行して使用され、できるだけ早く、自分のことは自分でできるようにするためでもあります。やがて、使わなくてもできるようになることもあります。
 そのときの状態により、選ばれる自助具は異なり、利用法も異なることがあります。自分でする工夫も役立ちますが、専門家の助言が望まれます。デパートなどで市販されている自助具もあります。最近は、各地に福祉機器展示場があり、そこで実物を見ることもできます。

(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)